認知症の家族の介護と、介護施設の利用。


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認知症は、厚生労働省の最新の推計によると2012年時点で462万人、さらに400万人とされる予備軍も含めると、全国の65歳以上の4人に1人に達しています。

有病率は85歳以上で4割を超え、ほぼ全ての世代で女性のほうが高くなっています。


認知症は単に歳をとって物忘れが多くなるといった状況と明らかに異なる、脳の認知機能が障害を受ける「病気」です。

ただし初期症状として、出来事のすべてを忘れてしまう(たとえば、何を食べたか思い出せない、ではなく、食事をしたこと自体を忘れてしまう)「記憶障害」が、認知症のおよそ5割を占めている「アルツハイマー型認知症」ではほぼ必ず起きるため、加齢による物忘れと見られがちで、最初はなかなか発症に気づきにくいという特徴があります。

また部分部分においては記憶が明瞭で、受け答えもしっかりしていることが多いため、認知症にかかったかどうかを家族が見抜くこと自体、とても難しいといわれます。

加えて、これまでしっかりしていた家族が認知症だということを心理的にもなかなか認めることができず、その事実を受け入れることにも相当の時間を要するのが普通とされます。


いくつか種類がある認知症のなかで最も症例の多いアルツハイマー型認知症」は、数年から十数年かけてゆっくりと病状が進行します。

また残念ながら現段階では、進行を抑制するための治療薬はあるものの、完治するための治療法はまだ見つかっていません


認知症の家族の介護では、まずは在宅介護をベースとするか、あるいは介護施設への入所を考えていくことになります。

認知症は何年にもわたって経過をみる必要のある病気であり、介護する側も、長期的に考えて備える必要があります。

そのため在宅介護をベースとする場合、介護のすべてを身内でまかなおう…などと考えては、介護する側がやがて疲れてしまいます。とりわけ認知症の高齢者を介護するにあたっては、そのような考え方を避けるべきです。

認知症と在宅介護については、姉妹サイト内記事「認知症と介護」もあわせてご覧ください。)

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認知症の家族を介護する場合、病気の症状とは言え、長年共に暮らしてきた親や配偶者から、長時間面と向かって悪口をいわれたりののしられたりするケースなども珍しくありません。

そのような状況が毎日続くと、介護する側も、肉体的にも精神的にも大変苦しい状態に追い込まれてしまいがちです。


在宅介護をベースに考える場合、まずは特別養護老人ホームや介護老人保健施設で預かってもらう「ショートステイ」(短期入所生活介護・短期入所療養介護)を利用して、経過を観察しつつ今後のことを考えるのも、多くの家族がとっている有効な方法のひとつです。

認知症の家族に向き合う介護者にも精神的・肉体的な休息をもたらしてくれるこの「ショートステイ」の活用は、「介護者のための介護」という視点からも、大切なことです。

ショートステイ」については、居宅サービス(3)〔外部に通所・通院+その他〕。 をご参照ください。


介護の状況が変化したり、認知症がさらに重くなったりして「ショートステイ」で間に合わなくなった場合は、介護施設への入所を考えていくことになります。

認知症の方が長期に入所できる介護施設としては、通常介護老人福祉施設(特養)グループホーム(認知症対応型生活介護)有料老人ホーム等が検討の対象となります(施設の詳細については、それぞれの説明ページをご覧ください)。


とりわけ中~重度の要介護者を受け入れるための中核施設とされる「介護老人福祉施設(特養)」においては、全国的にも待機者数が定員とほぼ同程度となっており、いまや多くの地域において、入所まで「数年待ち」が普通の状況となっています。

さらに改正介護保険法(2015年4月施行)によって、今後の特養への新規入所は、原則「要介護3以上」に限定されることになりました。


自分で食事や歩行ができる程度に健康で、軽度の認知症の場合に最も利用しやすいのは「グループホーム(認知症対応型生活介護)」でしょう。

ただしグループホームは施設数がまだ少なく、入所待ちの期間が長期化しやすいとされます。

また小規模な施設が多く、スプリンクラー未設置のグループホームがいまだに多い点などにも注意が必要です(介護施設のスプリンクラー設置義務化。)。


有料老人ホームの場合は選択の自由度こそ上がりますが、何と言っても公的施設に比べて費用面で高くつきやすい点がデメリットです。

他の介護施設は、どうでしょうか?

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)ケアハウス主に自立度の高い高齢者を対象とする施設で、認知症が重度化するリスクが高いと見込まれる場合において、特に不向きです。

ケアハウスならば特定施設の指定を受けている所を中心に探すべきですし、サ高住ならば認知症の入居者に関わる入居条件(退去条項)を、万一の事態に備えてあらかじめよくチェックしておく必要があるでしょう。


介護老人保健施設(老健)」「介護療養型医療施設」は、そもそも治療やリハビリを目的とした短期の入所を想定しており、認知症の方が長期間入所することは難しい状況です。

施設数も全国的に減少傾向にあり、将来的には施設の存続そのものも不安定と言える状況が続いています(介護保険三施設、懸念されている問題点。 ご参照)。

ちなみに、「介護老人福祉施設(特養)」への入所待ちとしてこれらの施設へ短期入所する方も多くいるため、地域によっては入所に数ヶ月程度かかることも珍しくない状況となっています。


入所を検討する場合は、こちらが望んだ時期の入所がすぐにかなわないのが普通になりつつある現状を踏まえ、視野を広くとって数ヶ月・数年先をみながら、地域包括センターやケアマネジャーと相談し準備を進めていくことが必要です。


次のコラム認知症における老々介護の現状が示す、介護保険制度の限界。では、認知症の方が介護施設へ入所する場合や、介護保険を利用する際の問題点について記します。


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