認知症の家族の介護と、介護施設の利用にかかわる基礎知識。


認知症は、いまや国内の患者数が推定160~180万人、全国の65歳以上の高齢者の認知症発症率もほぼ10人に1人、といわれる状況になっています。

認知症は、単に歳をとって物忘れが多くなるといった状況と明らかに異なる、脳の認知機能が障害を受ける「病気」です。


ただし初期症状として、出来事のすべてを忘れてしまう(たとえば、何を食べたか思い出せない、ではなく、食事をしたこと自体を忘れてしまう)「記憶障害」が、認知症のおよそ5割を占めている「アルツハイマー型認知症」ではほぼ必ず起きるため、加齢による物忘れと見られがちで、最初はなかなか発症に気づきにくいという特徴があります。

また、部分部分においては記憶が明瞭で、受け答えもしっかりしていることが多いため、認知症にかかったかどうかを家族が見抜くこと自体、とても難しい、といわれます。

加えて、これまでしっかりしていた家族が認知症だということを心理的にもなかなか認めることができず、その事実を受け入れることにも相当の時間を要するのが普通とされます。


いくつか種類がある認知症のなかで最も症例の多い「アルツハイマー型認知症」は、数年から十数年かけてゆっくりと病状が進行します。

また残念ながら現段階では、進行を遅らせるための治療薬はあるものの、完治するための治療法はまだ見つかっていません。


認知症の家族の介護では、まずは在宅介護をベースとするか、あるいは介護施設への入所を考えていくことになります。

認知症は何年にもわたって経過をみる必要のある病気であり、介護する側も長期的に考え備える必要があります。

そのため在宅介護をベースとする場合、介護のすべてを身内でまかなおう…などと考えては、介護する側がやがて疲れてしまいます。

とりわけ認知症の高齢者を介護するにあたっては、そのような考え方を避けるべきです。


認知症の家族を介護する場合、病気の症状とは言え、長年共に暮らしてきた親や配偶者から長時間面と向かって悪口をいわれたり、ののしられたりするケースなども珍しくありません。

そのような状況が毎日続くと、介護する側も、肉体的にも精神的にも大変苦しい状態に追い込まれてしまいがちです。


在宅介護をベースに考える場合、まずは特別養護老人ホーム介護老人保健施設で預かってもらう「ショートステイ」(短期入所生活介護・短期入所療養介護)を利用して、経過を観察しつつ今後のことを考えるのも、多くの家族がとっている有効な方法のひとつです。

認知症の家族に向き合う介護者にも精神的・肉体的な休息をもたらしてくれるこの「ショートステイ」の活用は、「介護者のための介護」という視点からも、大切なことです。

なお「ショートステイ」については、居宅サービス(3)〔外部に通所・通院+その他〕。 をご参照ください。


介護の状況が変化したり、認知症がさらに重くなったりして「ショートステイ」では間に合わなくなった場合は、介護施設への入所を考えていくことになります。

認知症の人が入所できる介護施設としては、通常は介護老人福祉施設(特養)介護老人保健施設(老健)介護療養型医療施設有料老人ホームグループホームとなります(施設の詳細については、それぞれの説明ページをご覧ください)。


しかし、とりわけ中~重度の要介護者を受け入れるための中核施設とされる「介護老人福祉施設(特養)」においては、全国的にも待機者数が定員とほぼ同程度となっており、いまや多くの地域において、入所まで「数年待ち」が普通の状況となっています。

また「介護老人保健施設(老健)」ですら、いまや「介護老人福祉施設(特養)」への入所待ちのために入所する方も増えたため、入所には数ヶ月程度かかる状況となっています。


入所となる場合は他の施設も含め、こちらが望んだ時期の入所がすぐにかなわないのが通常になりつつあることを踏まえ、数ヶ月・数年先をみながら、地域包括センターやケアマネジャーとも相談して準備していくことが必要です。


次のコラム認知症における老々介護の現状が示す、介護保険制度の限界。では、認知症の方が介護施設へ入所する場合や、介護保険を利用する際の問題点について記します。



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