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介護保険施設(1)〔介護老人福祉施設〕。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)は、要介護者(1~5)で、在宅介護が困難な65歳以上の人が利用できる施設です。

施設数は全国で7,249・定員数は約50万人(2014年)となっており、介護施設としては最多です。


介護保険法では「介護老人福祉施設」と呼ばれ、老人福祉法では「特別養護老人ホーム特養)」と呼ばれていますが、実質的には同一です。「公的ホーム」とも俗称されています。

施設の設置・運営は、地方自治体(都道府県・市町村)と社会福祉法人などに限定されています。

施設サービス費」は介護保険の適用により、1割負担となります。

なお改正介護保険法(2015年4月施行)により、「一定以上の所得者(年間の合計所得が160万円以上の者)」は、2015年8月以降の自己負担額が「2割」になります。


また、これまでは「要介護1」以上から対象となっていた特養への新規入所が、原則として「要介護3以上」に限定されることになりました。

ただし現在すでに特養に入所中ならば、要介護度が1・2であっても引き続き入所できます。また特養以外の施設では見守りが著しく困難であると判断された場合など、市町村の関与を条件として入所を認める「特例入所」も、併せて設けられています。

平成27年(2015年)の介護保険改正(1)~特養への新規入所者を限定


特養は他の介護保険施設に比べ低額ですが、トータルの費用は施設によって多少異なります。

「居住費」や「食費」は、厚生労働大臣によって定められた「基準費用額」が目安となるものの、月額の総費用は要介護度と利用日数、そしてさまざまなサービスの利用に応じて、「施設との契約によって決められる」ためです。

ちなみに低所得者には、居住費・食費の軽減制度が用意されています(自ら申請が必要)。

ただし前述の介護保険法の改正(2015年4月施行)により、この「低所得者」向けの軽減制度(食費・居住費の補助[補足給付])にも資産基準が導入され、一定の預貯金等がある者や非課税年金収入がある者等は、2015年8月から支給対象外となっています。


介護保険の給付の対象からはずれる居住費・食費・日常生活費のいわゆる「ホテルコスト」が、自己負担となります。

また個室の場合、個室利用料は介護保険の対象外であり、同様に自己負担となります。

そのため、あえて既存の相部屋タイプを希望する人も少なくないようです。

とりわけ洗濯代や理美容代などの「日常生活費」が、要介護の度合いに応じて想定以上にかさみ、最終的に結構な金額になる場合も多いので、注意する必要があります。

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介護保険施設(2)〔介護老人保健施設〕。

介護老人保健施設は「老健(ろうけん)」とも言われ、介護を必要とする高齢者の自立を助け、家庭で生活していけるように支援する施設です。

全国に4,096施設・定員数は約36万人(2014年)あり、現状はほとんどが医療法人の運営となっています。

要介護度1~5の認定を受けた65歳以上の高齢者で、病状がほぼ安定して入院治療の必要はないものの、リハビリテーションを必要とする人が入所できます。

これを逆からみると、リハビリテーションの対象外の人は入所できませんし、また現状のリハビリを継続できない場合には退所せざるを得ないということになります(ただし、入所契約の更新や再入所は可能です)。


本人の自宅復帰の目標に向かい、医師による医学的管理を基準にした看護・介護、リハビリテーション・栄養管理・食事・入浴等の日常サービスを併せて提供し、夜間でも安心できる施設となっています。

ただし、医師や看護師がいる施設なので医療面ではよいものの、施設に入所中は、原則として他の病院にかかることはできません(急病の場合は、連携する病院などで治療を受けることになります)。


病院での治療を終了後、多少の障害が残り、いきなり家に帰って生活するには、本人も家族も不安が残る場合があります。

そのような場合、一定期間を目安に(3~6ヶ月程度)介護老人保健施設(老健)に入所します。ここでは施設に常勤している理学療法士や作業療法士らによる自立機能向上を目的としたリハビリや、介護方法や介護用品の使い方の指導などが行われます。

一定期間(3ヶ月)ごとに在宅復帰が可能かどうかの入退所判定が行われ、可能なら帰宅ということになります。ちなみに介護老人保健施設(老健)の在所期間は、平均で1年弱程度です。

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介護保険施設(3)〔介護療養型医療施設〕。

介護療養型医療施設」とは、介護と医療の両方を必要とする高齢者が長期療養のために入所する、介護保険の適用される施設です。

病院・医院等の一角に設けられていることが多く、一見すると病院そのものに見えます。


医学的管理と看護のもとで、入所者が自宅等へ復帰できるよう、介護はもちろん日常生活の世話やリハビリなどを行ない、できる限り自立した生活を営んでいけるように配慮されています。

具体的には、病状が安定期にあり、医学的管理のもとで長期間にわたる療養や介護が必要な、要介護1以上の人が入所できます。

かつて65歳以上の高齢者が一定割合入院する病院は「老人病院」と呼ばれていましたが、介護保険成立後は「療養型病床群(現在の「療養病床」)」に含めて分類されることになりました。

療養病床」は、「医療保険が適用される病床」と「介護保険が適用される病床」に分けられています。

前者が「医療保険型療養病床(医療療養病床)」、後者が「介護療養型医療施設(介護療養病床)」となります。


「療養病床」は医療施設として、機能訓練室や談話室、食堂、浴室などの設備を備えつけなければならないことになっており、また面積も一般病棟よりも広く設けるよう義務づけられています。

(なお、療養病床のほとんどは相部屋となっており、一見したところ、ごく普通の一般病院の入院施設といった風です。)

施設の利用料は、要介護度や職員の配置人数などによっても異なりますが、医療の必要性が高いこともあり、特養や老健に比べると、利用料はもっとも高く設定されています。


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介護保険三施設、懸念されている問題点。

これまでご紹介してきた全国の介護施設数の約4割を占める「介護保険三施設」ですが、それぞれ現状において、深刻な問題を抱えています。


まず、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)」については、全国で施設数としては最多となるものの、需要に供給がまったく追いついていません


厚生労働省の集計によると、全国の特養の入居待機者数は52.2万人(2014年3月現在)。5年前に比べ、約10万人増加したとのことです。

現在、新しい入居者については、常時介護が必要な寝たきり・認知症などの要介護4-5の高齢者の入所が基本的に優先されていますが、どの市町村でも待機者が増える一方というのが、実情です。

要介護4-5の重度であったとしても、1~2年待って入居できればまだよいほう…という状況の施設も、決して珍しくはありません。

また介護保険法の改正(2015年4月施行)により、2015年4月からは特養への新規入所が、原則として「要介護3以上」に限定されました。

市町村の関与を条件に入所できる「特例入所」を活用するなどの道は残されているものの、入所希望者全体の35%程度を占める要介護1・2の約18万人は、今後は要介護度の悪化がない限り、特養に新たに入所できなくなります。

たとえば身体的には健康だが要介護1~2と判定されている認知症の方も、現実に少なくありません。そのような方が今後特養への入所を希望する場合は、判定において市町村の関わりが強くなることを、あらかじめ踏まえておく必要があります。


2015年の介護報酬改定では、特養の介護報酬は5%以上も減少(介護報酬全体では2.27%のマイナス改定)しました。

基本報酬の引き下げは減収につながるため、財政的余裕のある都心部の特養はともかく、地方の特養では経営が悪化するところも出てくると、懸念する声もあります。

さらに今後「要介護度3以上の入居者ばかり」となれば、患者の病院への一時入院回数も増え、施設のベッドが空く期間も全体で長期化することから、収入減に拍車がかかるリスクも出てきます(介護保険上は3ヶ月以内の退院が見込まれる場合、施設側でベッドを空けて本人の戻りを待つのが原則になっています)。


施設の増加をはかろうにも、建設費用の4分の3をまかなっていた国の補助金が2005年に廃止されたことから、地方自治体の負担も重くなっていて、そう新設を期待できないのが現状です。

負担分を介護保険料のアップに転嫁してまかなうのも、現実的には難しい状況です。


現在の特養で主流の「4人相部屋」のスタイルでは、個々の入居者のプライバシーや生活の質を維持することが難しいのは、明らかです。

施設の新設が難しくなる中で、ユニット型への移行を推し進めようとする厚生労働省と現実とのギャップは、大きくなる一方です。

国の建設補助金の廃止によって特養の新設そのものにブレーキがかかっているだけでなく、今後のユニット型への移行や個室部屋の増加もまた、期待薄となっているわけです。


特に地方の特養では、地元の名士や資産家などが社会福祉法人を設立し、経営主体となっている施設も多くあります。

なかには介護への関心や意識がそれほど高くない経営者もいて、施設の維持運営やサービス水準が低いままの特養も少なくないようです。

東京などの都心部においては、特養を新たなオープンしたにせよ募集で必要な介護スタッフを集めきれず、入所者数を定員よりも大幅に減らしてやりくりをつけるなど、介護業界の人出不足からくる問題も生じています。

全国の特養の3割近くが赤字」ともささやかれるなか、入居を希望する待機者の今後の激増に対し、「特養」はどれほどの供給増とサービス品質をもって応えられるかが不安視されています。

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