認知症における老々介護の現状が示す、介護保険制度の限界。
65歳以上の人口割合が20%を超える現在、厚生労働省の推計によると認知症が2035年には現在の2倍以上の445万人に達するとされており、もはや国民病といっても過言ではない状況です。
厚生労働省の2004年の国民生活基礎調査によれば、65歳以上の高齢者の介護が必要になった原因の第三位は、骨折・転倒と並んで「認知症」(11.2%)となっています。
高齢になると、けがや病気をきっかけとして心身が一気に衰え、それが認知症の発症にもつながりやすくなります。
認知症の家族の介護について、私たちは「自分たちがいつ直面してもおかしくはない問題」という意識を持って、その対処を考えていく必要があります。
また、認知症の家族の介護と、介護施設の利用にかかわる基礎知識。でも記しましたが、見逃せないのが「介護する側の精神的・肉体的な疲労の問題」です。
2004年国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、要介護者の年齢が70~79歳の場合、介護者の年齢層も同じである割合も、38%と最も多くなっています。
これはすなわち、日本では、「老々介護」状態になっている家庭がごく普通の現実としてあることを、物語っています。
父親が動脈硬化などによる脳血管性認知症、母親がアルツハイマー型認知症のように、両親ともに認知症を発症してしまう事例も、現実には珍しくはありません。
このような場合も、介護にあたる家族の負担増も大変なものになるはずです。
かりに、自分は都心勤務、地方に住む高齢の両親が二人暮しといったいわゆる「老々介護」に近い状況のときに、片方がもし認知症になってしまうと、事態は深刻になります。
介護する側がいまは元気であるにせよ、日々の介護にかかわる肉体的負担が大きく、過度のストレスも精神的ダメージとして積み重なることから、体力を著しく消耗して病気にもかかりやすくなり、自らの寿命を縮める結果ともなりかねません。
認知症の家族を抱える介護においても、介護保険の「要介護認定の区分変更」によって利用限度額が減額されたことで自己負担額が増したことや、他にも現行の介護保険が使いにくいという理由から、あえて介護保険を利用せず自分たちで在宅介護をやろうとする(やらざるを得ない)家族が増えています。
このことも、「老々介護」増加の背景のひとつといわれます。
また地方によっては、高齢者の耳に届く情報量が少なく、サービスを受けたくても、どこに相談しどこに行ってよいかがわからないまま、介護保険を利用していない高齢者も少なくない…という実態があります。
いわゆる「遠距離介護」の状況にある場合などは、帰省時に親の状態を観察するのみならず、周辺の介護施設の状況や近隣者の介護施設の利用状況などについても、万一に備えきちんと情報収集しておくことが必要でしょう(「遠距離介護」、介護施設選びで気をつけたいポイント。ご参照)。
介護施設への入所を考えるにしても、さまざまな問題が指摘されています。
特養など認知症に対応する施設への入所自体、大変な競争率のために難しくなってきていることに加え、地域によっては「ショートステイ」の利用ですら、数ヶ月前の予約が必要な施設も多くあります。
また介護施設は全国的に、どこもヘルパーや施設職員・介護士の不足に悩んでおり、彼らの責任感と重労働によって、なんとか現場が回っている状況です。
介護施設の現場では、ヘルパーや職員が食事・入浴など身体介助に忙殺されていることから、症状が長期化する認知症患者の言動や行動の経過観察などについて、身内が介護しているならば気づくであろうさまざまな点についてはとても手が回らない…というのが実態のようです。
かといって在宅介護を選択すると、上記のような介護する側の負担の増大を招くという問題もあり、難しいところです。
サービス内容や利用回数制限が利用者にとって厳しい、現状の介護保険制度を、もっと使いやすくしてほしい、との批判と要望は、強まる一方となっています。
介護する側のケアのひとつの方策として、同じような悩みを抱える人たちに話を聞いてもらったり、同じような介護状況に直面する家族の話を聞けるような機会を見つける、というものがあります。
他の方々がどう対応しているかを聞いたり、あるいは自分の悩みを同じような境遇の方を前に話したりすることで、精神的な負担が和らぐと同時にさまざまな気づきも得られる…との声もあるようです。
地域にそのような集まりがないか、「地域包括支援センター」やケアマネジャー等にたずねてみるのもよいでしょう。
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