「介護施設に入所できない未来」への準備。


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現実に介護が必要になってから介護施設を探し始める方も多いでしょうが、特に人口が集積する東京圏においては、それも段々と許されない状況になりつつあるようです。


日本の人口問題等について政策提言を行っている「日本創成会議」が2015年6月に「東京都高齢化危機回避戦略」を発表し、マスコミで大きく取り上げられました。

「東京オリンピックから5年後の2025年には、東京圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)の介護需要が現在から50%増加し、(医療不足はもちろん)介護施設の不足が深刻な状況になる。高齢者が介護施設を奪い合うような深刻な事態も想定されるため、今から対策を議論しなければ間に合わない。」というのが、提言の骨子になっています。

【PDF】東京都高齢化危機回避戦略(概要版)(日本創成会議)

あくまで起こり得る問題の提起であり、また東京圏内だけで解決可能かどうかもはっきりしませんが、注目すべきは「医療介護体制が比較的整った地域への、高齢者の移住」が、対策のひとつとして提言されていることです。ちなみに全国で41地域が、移住先にふさわしい候補地として選ばれています。


「箱モノもマンパワーもこれからもっと足りなくなることが見込まれるので、高齢者の地方への移住も促し、日本全体で考えてその凹凸をならしていこう」という趣旨の提言に、その賛否も分かれました。

しかし東京圏の後期高齢者の急増に介護施設の数が追いつかず、極めて近い将来に施設不足が深刻化するリスクが、一定のデータではっきりと突きつけられたことも確かです。

【PDF】東京都高齢化危機回避戦略 図表集(日本創成会議)


これはとりわけ要介護者を抱え、近いうちの介護施設への入居を視野に入れている東京圏内の家族にとっては、切実な問題でしょう。

比較的早い時期(10~15年後)に現実化しそうなことから、「行政のアクション待ちではまずい」「自分たちが動かないと、話が進まない」たぐいの問題でもあります。

仮に東京圏内の介護施設にうまく入所できても、同じ介護施設にいつまでもいられるとは限りません。

介護施設の経営者が替わったり、あるいは本人の病状が進んで施設から退去を求められて、やむなく次の施設を探さざるを得ないリスクもあります。

施設介護か在宅介護かはその時の要介護者の状態にもよるため、その時になってみなければわからないことではあるものの、住んでいる地域によっては最初から施設側に門前払いされ、その選択肢ごと断たれる可能性も出てきそうです。


一方、彼らを迎える地方側にとっても、新たな問題が生じるでしょう。地元外からの入居者が増えて介護施設がキャパオーバーとなり、地元住民の入居が不安定になる恐れもあるからです。

また外部からの要介護者の流入増によって、市町村の(介護保険の)公費負担額も増え、その財政も圧迫されることになります。

地域活性化のために推進してきた「移住促進策」とどう折り合いをつけていくのか等も、問題になりそうですね。


これまでの報道を見る限り、ハコモノとしての介護施設、および介護サービス従事者の不足をどうカバーするかといった、「供給者側の視点」のみがクローズアップされています。

たとえば「身体が比較的な健康な認知症患者はどうすべきか」といった、介護施設を使う本人および家族の側に立った議論は、今のところ乏しいようです。

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周囲に知り合いも無い、住み慣れた環境からいきなり右も左も分からない生活環境に移されることによる要介護者本人の混乱は避けられず、認知症の悪化リスクも増すでしょう。

都心にいた時よりも豊かな生活環境が実現したにせよ、本人の精神が環境の変化によってどういう影響を受けるかは未知数で、まったく別の問題です。

新しい環境にゼロから溶け込む側の高齢者は、おそらくは我々の想像以上に、精神的ストレスを強いられることになるでしょう。

認知症の家族の介護と、介護施設の利用。

もし介護を視野に入れて東京圏を離れる決断をした場合、本人が元気なうちに、新しい環境にある程度慣れさせるための準備期間が必要でしょう。

これはかなり早い段階から、適切なタイミングをはかって計画的に対処すべき問題です。

もっとも、あまり早い段階から施設に入所するのは本人の自立心を削ぎかねないため、かえって良くないかもしれません。

認知症、介護施設への入所時期と注意点。


実行の難しさを承知で記せば、本人の友人たちや家族も一緒に地方に移り住み、良い介護施設を探しながら本人ともども新しい環境に徐々に慣れていくことが、理想的でしょう。

本人とその家族にとって、できる限り「いまの環境ごと引っ越す」ための道を探るわけです。

介護が始まるかなり前から同じ問題意識を持つ地域の集まりに参加して、地方での生活に関わる情報交換や、勉強会の場も持つようにしたいものですね。

これまでの「遠距離介護」は、主に介護が必要になった地方在住の親に対して、子である自分たちが都市圏の職場から動けないことから生じた問題でした。

「遠距離介護」、介護施設選びのポイント。

これからは、もともと都心部で長らく生活してきた親にまったく馴染みのない地方の介護施設に入居してもらい、子供が時どき様子を見にいく「都会→地方型の遠距離介護」が増えてくるかもしれません。

将来に備えて早期に地方に転職した場合は経済的にどうなるか、移転先の生活費はどれくらい安くなるか、あるいは育児環境や子供の教育費がどう変わるかといった、様々なシミュレーションも必要ですね。

土地勘のある地域か否かでも異なりますが、現地への視察も何回かは行っておくべきでしょう。

移住への補助制度が用意された地域かどうかなど、自治体によっても対応に差が出てきそうです。

諸々考えると、準備期間として2~3年を費やす価値は十分にあるし、実行にそれくらいの慎重さが求められる話でしょう。

介護施設の入所、いつ・どう準備するか。


いずれにせよ介護施設探しは、特に都市圏に住む高齢者を抱える家族にとって、できるだけ早いうちに準備が必要な問題になりつつあるのは確かです。

高齢者を抱える家庭の一人ひとりが、極めて近い将来の「介護のある生活」をイメージしながら、ケースバイケースで予測を立てて、準備をしなくてはならない時代。

その時が訪れてから慌てて介護施設探しに走っているようでは、大切な家族を安心してまかせられそうな施設が全く無くなっている時代が、そこまで迫ってきています。

この問題は今後も繰り返しメディアに登場し、議論が続いていくことでしょう。

たとえば2015年10月には別の調査会社が、「東京圏以外の地方の政令指定都市・中核市においても、2030年までにその7割超で介護施設が不足する」と、前述の創生会議のものと異なった推計を提示しています。

地方でも介護施設不足に コンサル、創成会議と異なる推計(47NEWS)


また内閣府が2015年10月に行った調査によると、「老後も現在の地域に住み続けたい」と答えたのは全体の79.2%で、「別の地域へ移住したい・移住してもよい」と答えた人は19.1%でした。

この19.1%の回答者に移住したい地域を尋ねると、「地方都市部」との回答が55.2%と最も多く、次いで「農山漁村地域(20.3%)」「大都市(14.0%)」「海外(9.6%)」という順番となっています。

現状では大半の方が老後も今の地域で暮らしたいと考えていること、そして地方への移住を許容する人も、医療・介護環境が整っている都市圏を望んでいることが、この調査結果からは読み取れます。

【PDF】「国土形成計画の推進に関する世論調査」の概要(内閣府)

これらの予測を他人事と傍観していては、いざ自分たち家族が当事者となった時に、大いに困ることにもなりかねません。

国まかせでは立ち行かなくなる時期が近づいていることを自覚して、できるだけ早い段階から手を打つ必要がありそうです。


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