介護施設の入所、いつ・どう準備するか。
介護が必要かどうか、また介護施設へ入所すべきかどうかを判断をするきっかけはケースによって様々でしょうが、通常は当人が自発的に決断するケースは少なく、周囲で観察している家族がある段階で何らかの異変を察知するところから始まります。
たとえば高齢の親の場合、やはり日頃から様子をよく観察し、普段と違う常軌を逸した行動や不可解な行動した場合などに、その時の記録をとるようにしておきます。
そのような行動の回数が増えてきたり、行動が目に余るような状況となってきた場合には、地元の市町村窓口でもよりの保健センターや地域包括支援センターを確認し、今後の対応について相談するのがよいでしょう。
「まず医師に見せる必要がある」となった場合は、適切な精神科や神経科も紹介してもらえるでしょう。
その診断や治療と並行して、先々を考えての同居は可能か、あるいは介護施設への入居、高齢者住宅や有料老人ホームへの住み替えの是非などを検討していくことになります。
たとえば独力でトイレにいけなくなるような状況が出てきた場合は、遠距離介護で対応を続けるのはもはや無理と考えるべきでしょう。介護施設への入居を考える必要がでてきます。
介護施設への入居を検討する場合、「当人が現時点でどのような介護状態なのか」ということを、要介護認定を申請し決定してもらう必要があります。
自分の個人的な観察で要介護度を勝手に判断して話を進めるのではなく、ケアマネージャーや社会福祉士、かかりつけの医師など複数の専門家と相談しながら進めていくことが大切です。
そしてできるだけ早く介護保険の「要介護・要支援認定申請」を行い、認定を受けておくのがよいでしょう。認定の申請から結果を得るまで、1ヶ月程度の時間がかかるからです。
もし現在、親のそばに住んでいないということでいわゆる「遠距離介護」の状態が想定される場合、自分の住んでいる家に親を呼び寄せようとするケースは、現実によく見られるところです(「遠距離介護」、介護施設選びで気をつけたいポイント。をご参照ください)。
しかしながら、それが親にとって本当によい選択なのかは、よく考えてみる必要があります。
今の親世代では、核家族化が進んだ現代においても「先祖代々の家を守る」という意識の高い方もおられますし、また「住み慣れた友人・知人のいる土地をどうしても離れたくない」という方も、非常に多く見られます。
「高齢者の一週間は、若い人の一日に相当する」と言われるくらい、年をとってくると生活における時間の流れや刺激の受容のキャパシティも、周囲の感覚とは大きく異なってきます。
したがって介護について考える場合、自分の感覚をそのまま対象者に当てはめて当人の意向を先回りして考えていくようなやり方は、極力避けるべきでしょう。
ある時からいきなり、家族以外には友人知人もいない、全く見知らぬ土地の異なる環境下に置かれた場合、高齢者にとってそれが大変な負担となることは想像に難くなく、認知症の方は症状が悪化するなど、逆効果となることすら考えられます。
まして、当人が強くいやがっているような場合はなおさらです。「自分たちと一緒に暮らせば親も喜ぶだろう」と勝手に解釈し、話を早急に進めるようなことは避けるべきでしょう。
仮に家族と離れたままにせよ、住みなれた地元で生活を続ける前提でベストな選択は何かという視点から、考えていったほうがよい場合もあります。
このような場合においてもやはり、ケアマネジャーや社会福祉士など、様々な事例を取り扱っている専門家に相談してみることをおすすめします。
またこのような場合に備え、親の住む地域の地域包括支援センターに日頃から相談し、常駐する社会福祉士やケアマネジャーらと顔見知りになって地元の情報を仕入れておくことは、後々の役に立つことでしょう。
家族の介護の問題は、予見しないかたちである日突然に現れることが珍しくないものです。
そのような時になってあわてて介護施設を探しても、施設の側で受け入れ体制が出来ていないために断わられることも多いですし、なによりこちら側の検討期間が短すぎて、本人に合った施設を探せない可能性も高くなります。
日頃から「地域包括センターの無料相談」も活用し、きたる将来の介護問題を意識しながら介護施設関連の情報を入手したり、相談を続けながら人間関係を作っておくことは、いざという時に適切に判断し行動するための下準備にもなるはずです。
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