認知症、介護施設への入所時期と注意点。


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認知症は個人差の大きい病気ですが、85歳以上の認知症患者はすでに2012年現在で、全体の40%超にも達しています。

たとえそれまでどんなに健康で判断力がしっかりしていた人であっても、85歳前後からは、認知症の発症を現実に起こりうる問題として想定しておかなくてはなりません。


認知症で問題となるのは、家族が本人の異変に気づいても、医師の確定診断を受けて実際の治療に入るまで、どうしても遅れが生じがちなことです。

多くの場合、家族が異変に気づいてから本人を病院に連れてくるまでに、1~4年程度の年月が経過しているのが現実、と言われます。その間も個人差こそあれ、本人の病状は少しづつ不可逆的に悪化していきます。

こうなると最終的に介護施設への入所を決断するのも、すでに相当の時間が経過した後になるため、入所手続などの諸準備も後手に回り、結果的に家族の負担も増加することになります。


在宅介護でゆくのか、介護施設への入所を検討するかは、最終的に本人そして個々の家族の判断にかかってくるわけですが、どちらであろうとも本人に認知症の気配が見られた初期の段階で、家族が先々を考えた早めの判断をしながら実際に必要な手続を実行に移すことが非常に大事です。

施設介護を決断した場合は、認知症の症状が悪化した段階で本人にできるだけ早くスムーズに介護施設へ入所してもらえるよう、事前の準備が必要になります。


まずは近くの地域包括支援センターで相談すべきですが、認知症専門の介護施設としては特別養護老人ホーム(特養)グループホーム(認知症対応型共同生活介護)有料老人ホームなどが、現実的な選択肢となります(認知症の家族の介護と、介護施設の利用。)。

申込や費用の算段、周辺環境の調査、施設見学や体験入所など、成すべきことが多く控えています(家族の認知症に直面したときの心構えと対応、介護施設への備え。 )。

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絶対とは言いませんが、「親の判断能力が大きく失われる前に介護施設に入所してもらう」ことが、本人にとっても家族にとっても総合的にベターな判断となるケースも、現実には少なくありません。

まず「介護する家族が在宅介護に疲れきってしまい、その後ようやく親に入所してもらうことを決断」したような場合、その頃にはすでに本人が判断能力を失ってしまっていて、どう説得しても嫌がるだけというケースも存在します。

この場合、「本人に意思能力があるか(まだ残っているのか)」の見きわめが問題となり、本人の気持ちに反して入所を強制していると判断された場合は、そう簡単に施設への入所ができなくなることもあります。

家族が本人の施設入所を検討し始めることによって、ある種の後ろめたさを感じ、また本人をできるだけ長く自宅に住まわせたいという思いも手伝って、なかなか最終的な決断に踏み切れないことも多いものです。

そうなるといたずらに逡巡する時間ばかりが過ぎていき、その間に本人の認知症も進んで、後々さらに大変になってきます。


月に一回程度は介護施設を往訪して本人の様子を伺うなど、本人とのコミュニケーションをとり続ける気持ちさえ失わなければ、介護施設での規則正しい集団生活がプラスに作用して、本人の心身機能をむしろこれまで以上に活性化させてくれるものです。

「在宅介護が介護施設よりも尊いもの」といった思い込みをいったん捨てて、本人および介護する家族の現状と将来を、冷静に踏まえて判断する必要があります。


ちなみに複数の介護施設に入所の申込をしている場合は、原則として最初に入所の順番がきた施設に入ることになります。

ここで申込側の都合で断った場合は、通常はその施設の待機リストからは削除されるので、複数の認知症専門施設を比較しながら探す場合は、絞込みのための検討期間を早い段階で持つ必要があります。

もちろん認知症が相当進行して、他の入所者に迷惑がかかることが入所希望の段階ですでに明らかな場合、施設から入所を断られることも少なくありません。入所のタイミングも重要であり、その点でも申込手続等早めの対応が必要になってきます。


介護施設入所の注意点としては、申込の手配以外に入居費用の問題があります。また同じ介護施設でも、相部屋(多床室)と個室では費用も変わってくるため、入所が決まったとしても相対的に安い多床室はすでに一杯で、高額な個室しか選択肢が残っていないことも珍しくありません。


親の財産から入居費用を支出することが想定される場合、子供の兄弟間で話がまとまらないことも想定されます。

成年後見制度の概要と手続き、そして注意点。 で説明した成年後見制度の利用によって、本人の同意を得ることなく介護施設への入所契約を締結したり、その入居費用を親の財産から支出することも可能になります。


「親のためだから」と、事情を知っているからといって一部の子供の判断で親の財産処分を勝手に進めると、後々兄弟間でもめることが少なくないので注意が必要です。

なにより、子供同士でもめていて話が止まっている間も、本人の認知症の症状が少しづつ進行していることを忘れてはなりません


認知症の家族の介護施設への入所を検討するにあたっては、本人の病状悪化および将来に起こりうる可能性を考えつつ、前倒しで判断して必要な手続きを進めていくことが、先々のトラブルを回避するためにも必須であることを、念頭に置いておきましょう。


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