「遠距離介護」、介護施設選びのポイント。
普段は仕事の関係上どうしても離れて暮らさざるを得ないが、親がだんだん高齢化してきていることから、介護の問題が心配になってきている。
そろそろ介護施設の選択を、視野に入れておかねばならない…
こういった、「自分の仕事と親の介護とのやりくり」をどうしていくかという、いわゆる「遠距離介護」の問題に頭を悩ませている方は多いと思います。
家族の介護のためやむなく離職・転職した労働者は、40・50歳代を中心に、この5年間でおよそ50万人にも達するそうです。
介護施設への入所、いつからどう準備するか。でも書きましたが、「離れているから心配」といって単純に田舎からはるばる自分の住む家に呼び寄せて同居することが、本当に親にとって良いことなのかどうかについては、難しい面があります。
仮に、親本人が引越し・同居を望んだとしても、引っ越してきた後に環境のあまりの激変ぶりに、本人が「こんなはずではなかった」と予想外のショックを受けてしまい、認知症の症状などがかえって進んでしまうことすらあります。
しかしだからといって、仕事を続けながら、介護のために毎週末に帰省を続けるというわけにもいかない場合が、おそらくは大半でしょう。
たとえば、東京から北海道・九州などに月二回の帰省を続けただけで、仮に航空会社の介護帰省割引を利用したとしても、往復の飛行機代だけで年に100万円近くが必要になってきます。
体力的にも精神的にもそして経済的にも、介護する側が先にまいってしまっては、もとより仕方がありません。
また、休日にも仕事に迫られたり、あるいは職場の付き合いを悪くしてしまうのもどうか…といった状況との兼ね合いも、時々はどうしても出てくるものです。
したがって「遠距離介護」を前提として考えていく場合は、「職場の理解を得ること」「親の住む地元のサービス提供施設・介護施設についての情報を得ること」について、後々のためのアクションを早い段階で起こしておくことが、大切になってきます。
介護施設への入所、いつからどう準備するか。で書いたとおり、地元の「地域包括支援センター」の相談窓口等を活用しながら、近隣にどのような介護施設があるのか、自分たちのケースと似たような事例があるかなどについての相談や情報収集を、まずは帰省などの機会をみて行っておきたいところです。
地元の有益な情報も得られますし、センターには相談の記録も残ります。なによりある程度の心の備えもでき、いざという時にもスムーズに動きやすくなります。
また帰省時ごとに親の様子を観察するなかで、たとえば食生活が不規則になってきている、日々の生活は大変な部分が出てきている…などの諸点を観察し、必要とあらば様々な外部サービスの活用を考えていくようにします。
なお介護保険による外部サービスの利用を考えている場合、すぐの利用はかないませんので、介護保険の申請・要介護認定の手続を相当前から行っておく必要があることに注意しましょう。
介護保険を使わないなら、市町村の独自サービスや、地域支援事業として行っているサービスが使えないかどうか、あるいは地域の有償・無償ボランティアサービス体制はどうなっているかについても、あらかじめチェックしておきましょう。
まず本人の日々の安否確認については、ひとり暮らしの高齢者に緊急通報装置を貸与し、ボタンを押すと消防署など専用窓口につながる「高齢者緊急通報サービス(システム)」を実施している市町村が、かなりあります。
サービスの有無や費用などの詳細は、市役所の高齢者福祉の窓口に問い合わせてみましょう。
民間企業においても、高齢者が毎日利用するガスや湯沸しポットなどを経由して、遠方から本人安否を確認するための「見守りサービス」がいくつか用意されているので、必要に応じて検討してみましょう。
・くらし見守りサービス(東京ガス)
・みまもりほっとライン(象印マホービン株式会社)
・郵便局のみまもりサービス (日本郵便)
・TEPCOスマートホーム(遠くても安心プラン) (東京電力エナジーパートナー)
・あんしんテレちゃん(NTTテレコン株式会社)
また食事については、今は高齢者の栄養にも配慮した食事の個別宅配サービスも普及してきていますので、あるいは利用を考えてみるのもよいでしょう。
食事の宅配サービスについても行政の補助制度があるかどうか、事前に確認しておきたいものです。
さて、外部サービスを利用しようと考えたときに、肝心の親が「そんなものは必要ない、自分でできる」ととりあわない、子供の言うことをなかなか聞かない場合がでてきます。
しかし現実に必要と判断されるならば、そのまま放置しておくわけにもいかないでしょう。
こういった場合、兄弟がいる場合には一緒にないしは交代で、辛抱強く時間をかけて説得に努める必要があります。
あるいは日頃からかかりつけの医師などがいるならば、あらかじめお願いしておき、外部サービスの利用を本人にすすめてもらうのも一法です。
外部の権威者・第三者のアドバイスのかたちをとって、本人の理解を得るようにするなどの工夫を試みてみましょう。
在宅サービス利用だけでは間に合わなくなってきたと感じた場合は、いよいよ介護施設への入居を検討していく必要があります。
そのような場合はどうしても地元への帰省日数も必要になってきますので、「育児・介護休業法」に定められている「介護休業制度」の活用も検討してみましょう(概略については、「改正育児・介護休業法のあらまし(平成22年7月)」(厚生労働省)をご参照ください)。
家族1名につき通算で93日以内なら、介護が必要となるごとに「介護休暇」を取ることができます。
個々の職場の状況にもよるでしょうが、職場や上司の理解を得るように努めながら公的な制度にもとづく介護休業を活用していくことは、遠距離介護が今日的な問題として広く認知されている今、十分に現実的な選択肢となるはずです。
(なお、姉妹サイト内記事 老々介護・認認介護を防ぐ~認知症の進行に応じた在宅介護 もあわせてご参照ください。)
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