認知症に向き合う家族、介護施設の備え。
認知症はとにもかくにも、早期発見と早期治療が大事な病気とされます。
以下のようなチェックリストにもとづいて確認し、社会生活に支障をきたすほどの変化が本人に生じていると気づいた段階で、早々に専門医の診察を受けるのがよいでしょう。
「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」を作成しました(東京都福祉保健局)
そうすることで、時期をみて本人と話すことにより、本人および家族の将来について相談を行うための時間的余裕をつくることができます。
また食事内容の見直しや生活習慣の改善、あるいは市町村で実施している介護予防の催しへの参加など、できる対策を早い段階でとることもできるので、症状の進行をある程度遅らせていくことも可能になります。
なお、国内ではこれまでアルツハイマー型認知症に対応する薬は「アリセプト(成分名「塩酸ドネペジル」)」ひとつしか承認されていませんでしたが、2011年に入ってから服用薬「レミニール(成分名「ガランタミン」)」「メマリー(成分名「メマンチン」)」と貼り薬「イクセロン/リバスタッチ」が新たに承認されたので、今後は患者サイドの治療の選択の幅が広がることにもなりそうです。
本人の判断力が衰えてきている場合は、本人の財産管理やいざというときの介護施設入居・介護サービスの手配に備えて、「成年後見制度」や「日常生活自立支援事業」の利用を検討する必要もでてくるでしょう。
成年後見制度の概要と手続き、そして注意点。
しかし認知症の家族の介護と、介護施設の利用にかかわる基礎知識。でも記したとおり、家族としては身内が認知症になったという現実を認めたがらない気持ちが強くはたらくため、専門医の診察や介護準備などの対応が後手に回ることが多いのが、残念ながら現実です。
グループホームなど認知症向けの介護施設への入所を考える場合も、認知症の診断を確定して家族が早く動ける状況がつくれるなら、実際に入所する前の情報収集に時間をかけることができますし、これはと思う介護施設とのコミュニケーショをより多くとることもできます。
地域によっては介護施設にまったく入居の空きがなく、やむなく待機せざるを得ないケースも、現実には多々あります。
その間在宅で介護する場合、将来的には介護施設への入居を視野にいれるにせよ、「介護する側の負担感がどれくらいになるか」が体感的にわかるようになっておくことも、大変に重要なことです。
一般に認知症の方との介護生活は、数年間にわたることが多いからです。
認知症における老々介護の現状が示す、介護保険制度の限界。でも記したとおり、「介護する側」が疲れ切ってしまっては、その後どうにもならなくなってしまいます。
「介護する側のつらさ・負担」という問題は、介護者が倒れるようなぎりぎりの段階になるまで、誰からも気づかれない状況になりやすい傾向があります。
介護する側となる家族の息抜きや、気分転換の方法についても、あらかじめ対応策を考えておかなければなりません。
本人も家族も、デイサービスやショートステイ以外にも可能な範囲で、生活にある程度の変化をつけることを心がけたいものです。
そのためにも、近隣に介護に関する悩み事を相談できる場所や人の集まりがないかを探しておき、機会をみて顔を出すようにしておくとよいでしょう。
(介護にかかわる家族の負担の問題については、姉妹サイト内記事「在宅介護」もご覧ください。)
また介護施設に入所した後も、ただ施設にまかせきりにすることなく、家族が会いに行く機会をなるべく多く持つようにしたいものです。
介護施設を訪れたときは、施設の責任者・スタッフともできるだけコミュニケーションをとるようにします。
施設内の様子やスタッフの人数・顔ぶれの変化、本人が周囲へなじんでいるかなどについても、様子の変化を気をつけながら観察するようにしましょう。
最後に大切なことですが、在宅介護にせよ施設介護にせよ、グチをこぼしたりストレスのはけ口といった面を含め、いろいろ雑談や介護上の相談ができる人を何人か持つことを、意識して心がけるようにしましょう。
家族内だけですべて行おうとすると、心理的にいつかどこかで無理が生じます。知り合いが少なければ、まず地域包括支援センターのスタッフや市区町村の相談窓口で、いろいろ話してみるところから始めてみましょう。
地域によっては「認知症患者の家族の会」などがありますし、インターネット上でも、以下のように専用掲示板が用意されているホームページもあるので、これらの利用から外部と交流をはかっていくのもよいでしょう。
認知症ネット(認知症相談室)
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