通所介護事業所と、「お泊りデイ」。


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小規模型の通所介護(デイサービス)事業所」は、この10年で3倍近く増加し、特養に匹敵する水準になりました。

小規模のため事業者が参入しやすかったこと、認知症の人に対してアットホームできめの細かい環境を提供したこと、比較的リーズナブルな費用設定が利用者に受け入れられたこと、管理に手間がかかることから介護報酬が高く設定されていたこと等が、急激な普及の背景にあります。


しかし通所介護(デイサービス)があまりにも急拡大したことにより、劣悪な施設が混在しているのではないか、経営や運営の透明性はどうなのか、サービスの質が確保されているのか、といった問題に対して行政の目が十分に行き届かず、懸念の声が高まっていました。

市町村としては、状況を把握しきれていない介護施設が区域内に急増すると、介護保険財政が圧迫される恐れも強まります。


これらを背景として、2015年の介護報酬改定においては、まず通所介護全体で報酬の引き下げが行われました。

その上で、認知症や重度者に個別対応する機能の強化を進めるべく、「認知症対応機能」「重度者対応機能」といった新たな加算も設けられました。


また市町村の実情に応じた独自の裁量を強めるべく、2015年4月の介護保険法改正において、小規模型の通所介護事業所の一部(利用人員が18名以下)が「地域密着型サービス」に移行し、市町村による事業者の指定・監督が行われることになりました(2016年(平成28年)4月迄に施行)。

「地域密着型サービス」の概要。

なお、一定規模以上の法人等が運営する大規模型/通常規模型のサテライト事業所については、これまでと同じく都道府県の指定・監督になります。

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さて最近は、小規模型の通所介護事業所の「お泊りデイ(サービス)」に関わる問題が、クローズアップされています。

お泊りデイ」とは、通所介護の利用者が通常のデイサービスを受けながら、そのまま(通所介護)事業所内に宿泊するスタイルを指します。

食費込で1泊1,000~3,000円程度と安くすむことから、利用者の滞在が数ヶ月以上など長期間に渡るケースも目につくようになっています。

お泊りデイを使う前に~その背景と問題点


お泊りデイは現在「介護保険の適用外」であり、そのため人員配置や施設・設備・運営に関する国の基準も無い状態です。

お泊りデイの実態に関する統計も今のところありませんが、全国3万5千件(平成24年度実績)の通所介護事業所の約1割がお泊りデイを提供していると言われ、その数が右肩上がりに増加していることは確かです。

入居が難しい特養等の代替施設として、低所得者層を中心とする利用が広がっている模様です。


お泊りデイの問題として、介護保険の対象外であるがゆえ、「介護サービスの質」が担保されないことが懸念されています。

消防法上の宿泊施設にも該当しないため自動火災報知設備の設置義務も無く、罰則も定められていないことから、万一の火災事故が起きた際の事業者の対応にも懸念が残ります。

介護施設のスプリンクラー設置義務化。


これまで東京・大阪・愛知県など一部の自治体が独自に基準を定めていたものの、全国的に統一された規制は存在していませんでした。

このため厚生労働省は2015年(平成27年)4月より、人員・設備・運営等に関わる「お泊りデイサービスのガイドライン」を策定・導入することとしました。

【PDF】お泊りデイサービスへの対応(案)について(厚生労働省)


お泊りデイを提供する場合は、指定権者への届出を義務づけ、都道府県にその情報の公表を促すとのことです。

またサービス提供に関わる事故が起きた場合、市町村への報告を事業者に義務づけました。

ただしガイドラインには罰則が無いため、その実効性について懸念が残るとされています。


小規模型通所介護(の一部)が地域密着型サービスに移行し、市町村が指定・監督そして独自基準による運営を行なうようになれば、お泊りデイへの規制がさらに強まってくる可能性もありそうです。


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