ケア付の高齢者住宅(1)


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平成24年(2012年)4月追記


2011年(平成23年)10月に高齢者住まい法(高齢者居住安定確保法)が改正され(厚生労働省と国土交通省の共同管轄)、「サービス付き高齢者向け住宅」が創設されました。

サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(一般社団法人 すまいづくりまちづくりセンター連合会)

以下の記述でも登場しているこれまでの高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)・高齢者専用賃貸住宅(高専賃)・高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の制度は廃止され、この「サービス付き高齢者住宅」に一本化されました。

各専有部分の床面積25㎡以上、バリアフリー構造、トイレ・洗面設備等の設置、安否確認・生活相談サービスの必須化など一定の基準をクリアした物件を都道府県に登録する制度で、登録物件のみが「サービス付き高齢者住宅」と表示できます

なお有料老人ホームは従来どおり存続しますが、「サービス付き高齢者住宅」の登録を受けた場合は、有料老人ホームの届出は不要となります。

(追記ここまで)

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地方自治体が保険料の増大による財政の圧迫を警戒し「特定施設」の指定を出さなくなったこともあって、本格的な(介護付)有料老人ホームやケアハウスなどを新たに建設することが、全国的に難しくなってきているのが現状です。


そのような背景もあり、比較的自立度の高い高齢者が必要に応じ訪問介護のケアサービスや食事などの生活支援を受けられるよう、「賃貸アパート」や「戸建て住宅」「賃貸マンション」などにデイサービス施設や訪問看護事業所などを備え付け、24時間途切れないケアを実現するという「ケア付き高齢者住宅」の新設が、全国レベルで増えてきています。


介護保険三施設への入所に長期間を要したり短期での退所を迫られたりする現状、そして有料老人ホーム新設に対する厳しい見通しなど背景に、「ケア付きの高齢者住宅」は従来の住み慣れた自宅での在宅医療や在宅介護が難しい環境下、「施設介護に準じた在宅介護サービス」の提供を行える施設として、注目を集めながら発展してきています。

プライバシーの重視や、共同生活によって孤立感を防げる点を兼ね備えていることも、メリットといえるでしょう。

入居者はこれまでの暮らしぶりのまま必要に応じてケアを受けられるため、有料老人ホームに入居せずとも、事実上途切れの無いケアを受けることができるわけです。

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最近は、1階部分に「小規模多機能型居宅介護の施設」(自宅から通えて、必要に応じて寝泊りできる)、2階部分以上に高齢者入居のための賃貸部分を設けた「複合型マンション」や、1階部分にデイサービスを併設・2階にはグループホーム・そして3階以上を賃貸部分として設計した「ケア付の高齢者住宅」などが、登場してきています。

2005年12月には高齢者居住安定法にもとづき、設備・サービス等の情報を都道府県に登録する必要のある高齢者向け賃貸住宅「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」が創設されました。

購入価格帯も比較的手頃に設定されていたため、その後の「高専賃」の総登録戸数は14,000件にも達しました。

これまでの「高専賃」は、管轄が国土交通省であることや、都道府県への登録だけで済むことから有料老人ホームで必要な都道府県の検査による「介入」を受けずに済むことなどもあって、運営する介護事業者側にとってもメリットが多いといわれてきました。

(上の【追記】でも述べたように、高齢者住まい法の改正によって、現在で高専賃や高円賃という名称を支える法的・制度的根拠は無くなっていることにご注意ください。

今後は新制度のもと、設置基準を満たしたうえで「サービス付き高齢者向け住宅」に移行しない限り、これまでの高専賃や高円賃は法的には「普通の賃貸住宅」扱いとなります。)


ちなみに有料老人ホームは、介護サービス等を含む施設の利用権を購入する「終身利用権方式」が多いのですが、この「高専賃」などは法的には賃貸住宅であったことから、入居時に賃貸借契約を結ぶことで借家人の権利が法律で保護されており、万一事業者が倒産するような事態になったとしても、住み続ける権利を主張することができました(契約なので、もちろん途中解約も可能)


このように、何かと制約が多くて採算もとりにくい介護保険制度のもと自治体の監督を受けながら介護施設を運営するよりも、自由度とサービス設計の許容度が広い「ケア付きの高齢者住宅」に、独自に診療所や訪問看護ステーションなどのケアサービス施設を併設していくことによって、経営面での成功をはかろうとする事業者も増えてきています。

サービス付き高齢者向け住宅の登場と普及によって、そのような流れは今後いっそう加速するものとみられています。


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