介護施設、様々な名前が並存する理由。
介護保険三施設以外にも、他のコラムでご説明したような、有料老人ホームや老人福祉施設、高齢者住宅などの様々な介護施設があります。
なぜ、このように混乱を招くほどの様々な呼び名と種類の介護施設があるのか?と、疑問に思われませんでしょうか。
これは、高齢者をとりまく状況の変化に政治的に対応するべく、高齢者福祉に関する法律が新しくいくつも追加されてきたため、という理由が大きいようです。
日本の「高齢者福祉政策」が激しく移り変わってきた結果として、今この日本には、それぞれ異なる根拠法(所轄官庁)を有する、高齢者に関わるさまざまな呼び名の施設が共存する状態になっているのです。
高齢者福祉の有り様が変わってきた根本的な理由に、経済成長の鈍化(それに伴って余力がなくなってきた財政)、そして少子化の進行とセットになってハイスピードで進む高齢化があると言われます。
戦後を経て、高度成長期など好景気の時代には、老人の医療費の窓口負担がゼロであったりと、国家財政面においても全体におおらかなムードがありました。
しかしやがて経済が低成長の時代へと移り、その一方で高齢者人口がどんどん増加してきたことから、高齢者を対象とした福祉に関わる法律として、1963年に「老人福祉法」が制定されました。
今日でもこの「老人福祉法」は、高齢者福祉の基本となる法律として位置づけられています。
しかしその後、高齢者の医療を社会保険制度で行うことに切り替えた1982年の「老人保健法」、さらに財政状況のひっ迫から「介護」を別の専門的な財源で行うことを意図した1997年の「介護保険法」がつくられ、これらの法律の出番がある場合は先に適用されることになりました。
そのため、いわばルーツとなる老人福祉法の出番は、現在はずいぶん少なくなっています。
(なお、2008年4月からはじまった「後期高齢者医療制度」にあわせて「老人保健法」は全面改正され、「高齢者の医療の確保に関する法律」となりました。)
居宅サービスと、2006年4月の介護保険法の改正。でも説明のとおり、介護保険においては「要介護・要支援認定」が行われ、それによって介護保険が利用できるかできないかも決まってくるのですが、ここで認定を受けられなかった人や、あるいはそもそも介護保険料を払える余裕のない人が、もはやあらゆる福祉サービスを国家から受けられないという状態になってしまっては、大問題です。
そのため、「介護保険法」の網からもれたとしても、「老人福祉法」「老人保健法」の規定にもとづいた高齢者福祉のサービスを個々の状況に応じて受ける余地が、法制度上は開かれているわけです。
さて、この「老人福祉法」を根拠法としてつくられているいくつかの施設があり、これらは「老人福祉施設」と呼ばれています。
「老人福祉施設」は、「老人福祉法」において「老人デイサービスセンター」「老人短期入所施設」「養護老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「老人福祉センター」「老人介護支援センターから成る、とされています。
なお、「介護保険三施設」の中に、介護保険法にもとづく「介護老人福祉施設」がありましたが、名称がよく似ているので注意しましょう(ちなみに「介護老人福祉施設」は、「老人福祉法」における「特別養護老人ホーム(特養)」のことです)。
将来的には法律の整備に応じてこれらの施設の名称も統一されてくるでしょうが、まだ時間がかかりそうな気配です。
上記の「老人福祉施設」も、広い意味で「介護施設」に含まれることになりますが、次のコラム 「老人福祉施設」、その様々な種類。では、「老人福祉施設」に分類される個々の施設について説明します。
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