有料老人ホーム(1)〔総論〕。


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有料老人ホーム」はひとつの俗称的な呼び方であり、機能面でとらえた場合、「高齢者に配慮したマンション等の建物」+「食事・介護等の各種サービス」の有料による提供、となります。

なお、「有料老人ホーム」は法律上、「特養」のような「老人福祉施設」の扱いを受けていないので、注意しておきましょう。


厚生労働省は「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」を設け、「有料老人ホーム」を「健康型」「住宅型」「介護付」の3類型に分類しています。

介護保険上の「特定施設入居者生活介護」の事業者指定を受けている(介護付)有料老人ホームも、一般的にイメージされる(健康型・住宅型もあわせた)有料老人ホームの中に含まれることになります。


有料老人ホームは介護保険の「施設サービス」の適用がないため、入居金・施設設備・運営費などはすべて入居者自己負担となるのが原則です。

有料老人ホームへの入居は、あくまで「ホームと入居者の個別的な自由契約」になるためです。


しかし都道府県から「特定施設入居者生活介護」の事業者指定を受けている(介護付)有料老人ホームでは、ホームから受けるサービス(施設内で、施設のスタッフから受けるサービス)において、介護保険(特定施設入居者生活介護)を利用することができます。


別の言い方をすれば、(介護付)有料老人ホームを名乗る以上は絶対に、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていなくてはならず、指定を受けていなければ広告において「(介護付)有料老人ホーム」と称することはできません。

なお「特定施設入居者生活介護」については、居宅サービス(3)〔外部に通所・通院+その他〕。も、あわせてご参照ください。


(介護付)有料老人ホームの場合には、施設スタッフ、ないし施設が契約した外部の事業者がサービスを提供し、それを受けるかたちになります。

また多くの(介護付)有料老人ホームでは介護保険の定める以上の介護サービスを提供しており、それらは「上乗せサービス」「横出しサービス」と呼ばれています。

この部分は、利用者側の全額負担となるので、注意が必要です。


(介護付)有料老人ホームの他に、この介護保険のサービスである「特定施設入居者生活介護」が使える特定施設には、

・ケア付共同住宅(「シルバーハウス」「シニア住宅」など)
・ケアハウス
・高齢者住宅(「サ高住」「シルバーマンション」「高齢者アパート」など)


などが含まれます。

特定施設の対象範囲は以前は厚生労働省によって広げられる傾向にあったのですが、近年は自治体への権限委譲が進み、いまや市町村のOKがないと特定施設にはなれなくなっています(これは俗に「総量規制」と言われています)。

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介護保険の導入以降、これまでは有料老人ホームの数は急激に増加していました。


入所まで数年待ちとされる「介護老人福祉施設(特養)」に入居するまでのつなぎとして有料老人ホームを頼る、いわゆる「待機者」の増加や、入所期限が原則3ヶ月の「介護老人保健施設(老健)」からの受け皿として入所する利用者の増加などが、(介護付)有料老人ホームへの需要を押し上げてきています。

しかしながら全国の多くの市町村が、もう新たな枠が残っていないとしてこの「特定施設」となるためのOKを出さなくなっていることから、「特定施設」となる(介護付)有料老人ホームの大幅な増加は、これからは難しいとみられています。


さて有料老人ホームの料金ですが、入居時に一括して支払う「入居一時金」、そして月々に支払いが必要な「月額利用料」の2種類が通常必要とされます。

(ちなみに「入居一時金」と「月額利用料」を必要とするこの契約形態は「利用権方式」とよばれ、有料老人ホームにおいて最も一般的な居住の権利方式です。)


相場としては、「入居一時金」が数百万円程度(高級感を謳っている施設の場合は、千万円単位のケースがあります)、「月額利用料」が15~30万円といったところです。

とりわけ入居一時金は全国で数倍程度の地域格差があり、関東圏・近畿圏がもっとも高額になっているようです。


また、最近では「入居一時金不要」を謳う有料老人ホームも増えてきていますが、入居一時金」は基本的に家賃の前払い的な性格があることから、そのようなケースでは通常は「月額利用料」が高く設定されていることに注意しましょう。


「入居一時金」不要のタイプを選択する利用者は、「月額利用料」が高くなるにしても、最初から特養への入居待ちとして利用するつもりで、滞在期間を1年から2年程度と短く想定する人が多いとも言われています(もっとも、思惑どおりのタイミングで特養に入居できるとは限りませんから、その場合は結果的に想定以上の金額がかかることもあります)。


なお入居一時金は、一定の期間で償却される(施設のほうで費用化して、利用者が払った金額から差し引いていく)ことになります。

入居一時金は最初に一括して支払うケースがほとんどですが、退去時の償却率や償却期間は、有料老人ホームによってまちまちとなっています。

初期償却率を高めに設定している有料老人ホームは決して珍しくないので、選択時には注意して比較することが必要でしょう。


月額利用料についても、これを支払えば後はかからないということはむしろ少なく、独自の別途追加料金を設定している有料老人ホームが多く、それらのオプション費用を加算していくと、総額が大きく膨れ上がるケースがあります。


したがって「月額利用料でカバーされる範囲はどこまでなのか」を、事前にちゃんと確認しておく必要があります。


次のコラム有料老人ホーム(2)〔3類型について〕。では、厚生労働省の定める「有料老人ホームの3類型」について解説します。


なお介護付有料老人ホームについては、よろしければ姉妹サイト「介護付有料老人ホーム 入居者目線で選ぶ智恵」も、あわせてご覧ください。


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