生活保護受給者と、介護施設への入所。


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生活保護受給者は世帯数ベースで163万世帯(2015年9月末時点)に達し、過去最多を更新しています。その中で夫婦とも65歳以上の高齢者世帯が、約5割を占めています。

年金を積立てていなかった等の理由で本人が生活保護を受給しているものの、そろそろ自宅暮らしも限界なので、手頃な介護施設へ入居してもらいたい...。

生活保護の受給者が介護施設へ入所を考える折、現状の制度はどうなっているのでしょうか。


まず自宅で生活する場合、生活保護を受けている人が介護保険の被保険者なら、受けていない人と同じ介護保険サービスを受けることができます(ただし、介護保険の区分支給限度基準額の範囲内に限られます)。

生活保護受給者で介護保険料を支払う能力があると認められた場合は、それに応じて保険料を負担することになります(福祉事務所のケースワーカーが、支払い能力を判断して決定します)。


しかし支払いが難しい場合は、生活保護法上の「介護扶助」(本人の1割負担分)が支給され、いわば肩代わりされるかたちで、介護保険料の自己負担はゼロになります。

介護保険は、生活保護法の「介護扶助」に優先する位置づけとなっています。したがって本来ならまず介護保険料を納めなくてはなりませんが、生活保護の受給中は、介護保険料相当額が生活保護費に含めて支給されることになります。

「介護扶助」は現物給付なので、福祉事務所から「介護券」が発行され、委託サービス事業者宛に直接送られます(指定居宅介護支援事業者では介護保険から全額給付されるため、介護券の発行はありません)。

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それでは生活保護の受給者であっても、介護施設へ入所できるのでしょうか。結論から言えば、介護保険施設においては、通常の場合とまったく同じ手続きで入所が可能です。


介護保険の(第1号)被保険者であれば、施設利用料(9割)が介護保険からの保険給付、残りの1割・食費が生活保護の「介護扶助」、そして入所時や入所後の日常生活に必要な日用品購入費用等は生活保護の「生活扶助」として支給されます。介護保険施設への入所・退所にかかる交通費も、「介護扶助」から支給されます。


注意したいのは、上述の介護サービス提供事業者や介護施設は、介護保険法の指定だけでなく、あわせて生活保護法の指定も受けた「指定介護機関」でなければならない点です。

【参考】生活保護法に基づく指定医療機関及び指定介護機関の指定等(厚生労働省 関東信越厚生局)

ただし生活保護法上、介護老人福祉施設(特養)は、介護保険法による指定を受ければ生活保護法の指定を受けたものとみなされます

したがって特養への入所条件を満たしたなら、生活保護の受給者はどの特養でも入所可能となります。

特養においては従来型の多床室以外に、個室(ユニット型)が増えてきています。

現在は自治体と社会福祉法人による「利用者負担分の減免適用」が受けられれば、生活保護受給者も個室を利用できるようになっています(但し自治体ごとに運用面で違いがあるため、事前に確認が必要)。


認知症グループホーム軽費老人ホーム(ケアハウス)であっても、生活保護法上の指定機関となっていて、食費や居住にかかる生活費として支給される「住宅扶助」の金額内に収まっているならば、入居が可能です。

ただし月額の賃料が、生活保護の住宅扶助の基準額を超える地域もあります。加えてこれらの施設では、リース代や理容費など実費が別途でかかるケースも多く、それらを積み上げると生活保護費では賄いきれない恐れもあるので、当該施設の入居前によく調べておく必要があります。


有料老人ホームはどうでしょうか。有料老人ホームは一般に利用料の水準が一番高く、生活保護費のほとんどを施設への支払に充てざるを得ないため、娯楽費などに充てる金銭の余裕も無くなり、居住者の生活の質という面で問題になります。

そのため利用料が安いいわゆる無届け老人ホームへの需要も尽きませんが、居住環境や防火設備等に問題のある施設も多く、入居者の生命・身体に関わる生活の安全面に関わる不安が残ります。

無届け有料老人ホームとは何か。その背景と問題点とは。


介護施設の利用料を支払うことによって困窮し、生活保護の申請が必要な状態に置かれそうな、いわゆる「境界層」に属する方に対しては、「境界層該当措置」の制度が用意されています。

これは福祉事務所の審査の上で「境界層該当証明書」の発行を受けた場合は、利用者負担が軽減され生活保護の申請をしなくてよくなるという仕組みの制度です。

ただしこの制度の利用にあたっては、いったんは生活保護の申請をする必要があるため、まずは福祉事務所や市区町村の福祉課に相談してみる必要があります。


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