世代間交流施設~介護施設の新しい流れ。


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世代間交流施設」という言葉を、お聞きになったことがあるでしょうか。「異世代交流施設」「幼老複合施設」などと呼ばれることもあり、いまだ定まった名称と定義を持つものではありません。


保育園の園児らが介護施設や公民館などを訪れ、地域の行事や遊びを通じていっしょに時間を過ごすような「スポット的・イベント的」な世代間交流は、以前から行われてきたところです。

これらは介護施設以外にも保育所・幼稚園、あるいは地域のNPO・社団法人等が主体となって企画し、社会福祉協議会等が協力・協賛しているケースが多いようです。


そのようなスポット的体験を日常的レベルまで拡げるべく、介護施設と児童施設を併設、あるいは実質的に一体化した施設を、今は「世代間交流施設」等と総称しているようです。

現状は介護事業者が介護施設の敷地内あるいは近隣に、保育所を設置するスタイルが多いようです。

全国的にもまだ数えられるほどに事例は少なく、一部の自治体を中心とした実験的な取り組みの域を出ていないのが現状です。


しかし少子高齢化・核家族化・共働き家庭の増加が全国的に進むなか、生活の質を高めることを希望する高齢者の増加と、他の世代と交流する機会が乏しい幼児・子供のニーズが合致していることもあって、介護施設や保育園を舞台にした世代間交流が、最近クローズアップされつつあります。

同世代間の交流拠点である「老人クラブ」が全国的に減少しつつある一方、これまで行われた各種の調査によれば、異世代となる幼児や子供とのふれあいを好意的に迎える高齢者は、潜在的に決して少なくありません。


経営側も設備投資面で効率化がはかれることに加え、世代間交流というソフト面でのニーズの高まりを新たなビジネスチャンスと捉える動きが強まってきており、世代交流型の介護施設への注目は高まってきています。

介護施設の新しいあり方を示す動きとして、メディア等に取り上げられる機会も、少しづつ増えてきています。

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もともと「世代間交流施設」の成り立ちは、財政的に厳しい国や自治体が既存の土地施設の有効活用をはかるべく、政策的に事業者を後押ししてきた産物とも言われます。

介護施設に保育所を併設する場合は、特に「小規模多機能型施設」や「デイサービス事業所」等が、様々な層のニーズに柔軟に対応しやすいと言われます。

「地域密着型サービス」の概要。


施設を併設するメリットは、少なくありません。介護施設の入居者・利用者にとっては生活上の新しい刺激・楽しみが加わり、子供たちにとっては高齢世代とのふれあいを通じた知識や知恵の伝達が、生育面でも大きなプラスになるためです。

派生的には、介護施設と保育所のそれぞれで働くスタッフにおいても、異世代とのコミュニケーションを通じ、対人関係の技術に奥行きが出ることが期待できます。


その一方、スポットのイベントでの一時的交流ならまだしも、同一敷地で日常的に異世代が顔をつきあわせる中で起こりそうな問題点について、すでにさまざまな指摘が成されています。

同じ空間に高齢者と子供がいるだけで自然に交流が始まる、というものでもありません。交流の現場では、一般に子供たちがシーンの主導権をとり、高齢者はそれを見守るかたちになることが多くなります。

もちろん入居高齢者の性格によっても、子どもたちとの向き合い方の上手下手や凹凸感などが出てくるでしょう。それによって介護施設での暮らしが心地良い空間になったり、逆にストレスが強まる要因にもなるでしょう。


認知症の高齢者や日常動作が不自由な入居者との交流をどうするか、あるいは保育園に自閉症ぎみの子供がいる場合など、施設として個性の異なる入居者のケアをどう調整していくのか、といった問題もあります。

高齢者と幼児が交流するときの安全性の確保など、施設・設備のハード面の問題についても、十分な検討が必要です。

異世代交流のノウハウがある程度確立するまでに、試行錯誤する職員の負担感が大きく増すことは容易に予想されるため、職員の心身面のケアに対する配慮をどうするかも、大きな課題となってくるでしょう。


世代間交流施設においては、年齢や世代を超えた人間関係の適切な距離感を練習できるメリットがあると同時に、当事者間に任せたままではうまくいかない可能性が高いというデメリットもあるわけです。

世代間交流に知識とノウハウを持つコーディネーター・専門家の育成が、異世代交流施設の今後の全国的増加を促すために必須となるでしょう。


並行して、「異世代交流施設」というコンセプトの全国的な普及を促すべく、国や自治体による重点的な広報活動などの政策支援も必要になります。

このように、世代間交流施設はまだ実験段階ではあるものの、これからの介護施設のあり方に一石を投じる新たな試みとして、注目しておきたいところです。


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