介護報酬の改定と利用者への影響。


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平成28年(2016年)4月追記

下記の「介護処遇改善加算」については厚生労働省が追跡調査を行っており、介護職員の平均給与が約1万3千円増えた(2015年9月時点・前年同期比)との結果が発表されています。

但しこの「介護処遇改善加算」が恒久措置ではないこと、ベースアップでなく特別手当等の一時金加算で対応した事業所が多かったことなどから、今後の安定的な待遇改善につながるかを不安視する声もあります。

平成27年(2015年)5月追記

5回めを迎えた平成27年(2015年)4月の介護報酬は全体で▲2.27%と、マイナス改定に逆戻りしました。 特に施設サービスの基本報酬の下げ幅が大きく、特養は5%以上の減少となっています。

背景には施設入所から、地域密着型サービス等を活用した在宅での介護を促そうとする国の思惑がありますが、施設の経営側からは介護報酬減によって経営が悪化するとの批判も聞かれるところです。

介護職員の待遇改善を目的とした「介護処遇改善加算」(職員賃金に月額平均1.2万円を加算)こそ盛り込まれましたが、月額で加算しても年収ベースで調整される可能性も残ることから、今後の推移を注視する必要がありそうです。


同じく平成27年(2015年)4月から適用される「介護保険料」についても、2015年4月から全国平均ベースで月額5,514円になると厚生労働省が発表しました。

月額介護保険料(全国平均)は最も高い市町村で8,686円・最も低い市町村では2,800円となり、自治体間で最大3倍程度の格差がある状況です。

(なお平成27年(2015年)の介護報酬改定については、介護施設に関わる、介護報酬改定(2015年)のポイント。 ご参照。)

平成24年(2012年)3月追記

4回目の介護報酬改定となる2012年(平成24年)4月からの改定率は、「+1.2%(在宅分+1.0%、施設分+0.2%)」となりました。


在宅分のアップ率の大きさについては、引き続き「施設から在宅介護への移行」を図ること、特に「定期巡回・随時対応サービス」などの新しい在宅サービスや自立支援型サービスの強化をはかりたい、という国の意向が反映されています。

介護職員の処遇改善については、「これまで講じてきた処遇改善の措置と同様の措置を講ずることを要件として、事業者が人件費に充当するための加算を行うなど必要な対応を講じる」としています。

これまでの「介護職員処遇改善交付金」という国庫負担によるやり方を廃止し、平成27年3月末まで「介護職員処遇改善加算」を例外的・経過的に創設し、今後は介護報酬のほうで対応するものです。

介護職員の士気に関わる重大な問題でもあり、月額1万5千円程度とされていた介護職員給与の底上げを、今後とも現状水準程度はキープしようということのようです。

ただしこの「介護職員処遇改善加算」は「3年間の時限的措置」なので、3年経過後の対応がどうなるのかは、気にかかるところです。

また前回改定までと同様、介護報酬の改定が「介護従事者の処遇改善、そして利用者の介護保険料にどう反映されることになるのか」は、今後の動向や関連調査の結果に注意する必要があります。

(ちなみに2012年(平成24年)4月から適用される「介護保険料」は、全国平均ベースで月額4,972円となり、次回改定では5,000円台の大台を突破するのが確実な状勢です。 制度開始時に月額2,700円だった介護保険料も、すでに倍以上になりました。)

(追記ここまで)

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2000年に介護保険制度が発足して以降、原則として3年ごとに見直すことになっている、介護事業者に支払われる「介護報酬」の3回目の改定が行われ、2009年度(2009年4月)から新報酬が適用されました。

過去2回の改定においては、いずれも2%強引き下げられていたこの介護報酬、今回の改定においてはじめて、前回から3.0%の引き上げが行われる「プラス改定」となりました。

これは、介護施設などで働く人が低賃金・長時間労働を強いられ続け、職員の離職率が20%強に達すると言われる介護業界に、このままでは人がこなくなってしまうと懸念されている現在の状況を、職員の賃金アップなどの待遇改善によってなんとか良くしていこうとする狙いがあるためです。


介護報酬」は、介護サービスを提供する事業者側がサービスの対価として受け取る、いわば事業者の売上にあたるものです。

介護報酬のアップは、事業者の経営業績の改善を意味するので、ひいてはそこで働く職員の待遇の改善にもつながるだろう…という狙いが込められています。


現在、介護職の平均給与は月額20~24万円程度ですので、全産業平均の月額33万円と比べるとかなりの差が生じています。

もっとも、介護保険サービスの利用者側にとっては、介護報酬が上がるということは、構造的には利用者の自己負担額の増加を意味します(ただし介護報酬の金額は、地域やサービスごとに市区町村で独自に設定した係数をかけて調整されているため、必ずしもストレートに利用者の自己負担増につながるようになってはいませんが)。

介護保険においては居宅サービス利用額の1割が、利用者の自己負担となっているためです。

ただしすべてのサービスにおいて単価がアップするのではなく、単価がアップしたサービスを利用した場合のみ、従来に比べて自己負担額が増えるかたちになります。


介護保険は国の制度ではありますが、自治体(市区町村)ごとの責任で運営しており、介護保険料も市区町村で異なっています。

この3年に1回行われる介護報酬の改定が、各自治体が介護保険料を決めていくベースとなっているわけです。

その介護保険料ですが、全国平均ベースでは月額約180円のアップ、年間で約2,160円の負担増と試算されています。

しかし、いつもなら介護報酬の改定にあわせてアップするはずの「介護保険料」を、現状とほぼ同水準のまま据え置くか、剰余金を取り崩すなどして逆に引き下げる自治体もでてきているようです。

2008年から後期高齢者医療制度が始まっていることもあり、高齢者の負担が増す一方という今の状況に対して、政策的に配慮する自治体がいくつかでてきているのがその理由です。


今回の改定では、夜勤など負担の大きい業務を行う事業所で基準以上の人員を配置した場合や、あるいは介護福祉士などの有資格者や勤続年数の長い職員を多く配置している事業所に対して、介護報酬を上乗せすることになっています。


また、認知症対応型のグループホーム「地域密着型サービス」の概要。ご参照)で「看取り(みとり)介護」を行う場合などにおいても、一定の加算金額が介護報酬に上乗せされます。


介護サービスの価格は、全国基準として「●●単位」で表示するように定められています。

「1単位あたりの単価」=10円です。

今回の改定では、人件費が高くつく東京など、大都市圏の事業所における単価基準も見直されています。

具体的には、「1単位あたりの単価=10円」にすでに上乗せしている金額をさらに引き上げる、いわゆる「単価アップ」が行われます。


したがって、これらの人件費が高い地域や人員配置が基準以上の介護施設において介護サービスを受けている利用者は、自己負担額が増えていく可能性が高まることになります。

自己負担額がどれくらい増加するかは、事業所の所在地・利用するサービス、そしてその利用状況により異なるため一概には言えませんが、厚生労働省のモデルケースにおいては、月1,000円~3,500円程度の負担額アップ事例が示されています。


政府は今回の介護報酬の3.0%アップにより、常勤職員80万人の給料の月2万円増、介護業界の人材10万人の確保という試算を提示しています。

しかし、過去2年減らしてきた分を元に戻した程度の上げ幅では、待遇改善というにはとても足りないとする批判が出されています。


また、今回の介護報酬増が、果たしてストレートに職員の給料アップにつながるかを疑問視する声も、根強くあります。

なぜなら、職員の給料は、あくまで勤め先の介護施設側の判断によって決まってくるため、それらの施設が介護報酬のアップ分を人件費に回さず、過去に積み重なった施設の赤字補てんに使ってしまう可能性も残されているからです(介護保険の制度的硬直性が、介護施設の利用者にもたらす問題を知る。ご参照)。

職員の待遇改善にストレートにつながるかどうかについて、今後の「外部チェック」の必要性が指摘されています。

そのような懸念から、当初は介護施設の事業者に職員の給与水準を公表させる案もあったようですが、事業者サイドの反対もあり、最終的には「自主的な公表」を期待する線に落ち着きました。


さて今回の介護報酬増の決定を、介護施設の利用者サイドとしては、どうとらえるべきでしょうか。

利用者の立場からすると、介護保険料や自己負担額がアップすることは確かに痛いですが、それでも長時間労働・低賃金イメージの強い介護業界の待遇改善が行われなければ、よい介護サービスを提供できる優れた人材も集まらず、介護業界が全国的に縮小の一途をたどる可能性が高まります。

そうなると、最終的に利用者が、介護サービスそのものをなかなか利用できない、あるいは利用できたとしても質の低いサービスに甘んじなければならなくなる恐れもでてきます。


したがって、今回の介護報酬アップそのものは、スケール的にはまだ不十分であるにせよ、国が事態の改善をはかろうとして前向きに動いた結果であり、利用者にとってもプラスの方向に作用するものと考えておくべきでしょう。

ただし、介護報酬のアップ分が、介護業界の改善にはっきりと効果をもたらす方向に使われたかどうかは、次の改定が行われるまでの間、利用者としてもよく観察しておく必要はありそうです。


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