ケア付の高齢者住宅(2)
【平成24年(2012年)3月追記】
2011年(平成23年)10月に高齢者住まい法(高齢者居住安定確保法)が改正され(厚生労働省と国土交通省の共同管轄)、「サービス付き高齢者住宅」が創設されました。
サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(一般社団法人 すまいづくりまちづくりセンター連合会)
これまでの高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)・高齢者専用賃貸住宅(高専賃)・高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の制度は廃止され、「サービス付き高齢者住宅」に一本化されました。
各専有部分の床面積25㎡以上、バリアフリー構造、トイレ・洗面設備等の設置、安否確認・生活相談サービスの必須化などの一定の基準をクリアした物件を都道府県に登録する制度で、登録物件のみが「サービス付き高齢者住宅」と表示できます。
なお有料老人ホームは従来どおり存続しますが、「サービス付き高齢者住宅」の登録を受けた場合には、有料老人ホームの届出は不要となります。
(追記ここまで)
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(高齢者住まい法の改正によって、現在では以下の記事にある「高専賃」や「適合型高専賃」という名称を支える法的・制度的根拠は無くなっていることにご注意ください。
今後は新制度のもと、設置基準を満たしたうえで「サービス付き高齢者向け住宅」に移行しない限り、これまでの高専賃や高円賃は法的には「普通の賃貸住宅」扱いになります。)
高専賃のなかには、「適合型高専賃」と呼ばれ、一定以上の居室数にトイレや浴室などの設備・運営において、一定基準を満たしたグレードアップ版が存在しました。
食事や介護サービスを提供すると、有料老人ホームに該当するため、実質的に「許可制」ともいわれる厳しい内容の届出を地方自治体に行ったうえで、その監督下・制約下に置かれることになります。
しかしながら、「適合型高専賃」となった場合は有料老人ホームの届出が不要であったため、事業運営者にとっての経営自由度が増す、というメリットがありました。
さらに「適合型高専賃」となった場合には、「(介護付)有料老人ホーム」や「ケアハウス」と同様に介護保険法上の「特定施設」としての指定を受けることもできたため、入居者にとって利用できるサービスの幅が広がるという利点もありました。
このようにメリットの多い「適合型高専賃」でしたが、地方自治体が現在は「特定施設」の指定を実質行っていないため、特定施設である「適合型高専賃」の数自体は非常に少ないままに終始し、主流は「特定施設の指定を受けない適合型高専賃」でした。
「特定施設」の指定を受けないことで、施設としては介護保険が利用できなくはなるものの、運営側の自由度が拡がる分、利用者ニーズを汲み取った柔軟なサービス提供ができるメリットを謳い文句にしていた事業者が多かったようです。
介護事業者サイドにとっても、ただでさえ厳しい事業環境下、介護保険からの報酬だけで経営の安定を今後ともはかっていくことは、今後とも非常に厳しい状況となっています。
さらに今後は介護報酬の自己負担割合が増加していく流れと予想されることから、利用者が今まで利用していたサービスを止めたり、利用回数を控えるなどの動きも想定されるところです。
したがって、介護報酬に頼っているだけでは経営面で苦しくなるため、介護保険事業を行いつつも、このような介護保険の外にある「高齢者住宅」を舞台として、関連する住宅サービスを組み合わせ利用者の囲い込みを行うと同時に、経営を安定化させようと考える事業者が増えてくるものと見込まれています。
以前の「高専賃」は、居室の広さ・設備・運営などで一定の要件を備えれば、自治体に有料老人ホームの届出をする必要がありませんでした。
そのような背景もあってか、現在でも「高齢者向け」「高齢者専用」住宅等と称して、不十分なサービス体制のまま運営する賃貸住宅が存在するなど、玉石混交の状態との警告もあります。
(上の【追記】で記したように、法的に名称独占権が認められる表示は「サービス付き高齢者向け住宅」のみとなっています。)
高齢者住宅への入居を検討するにあたっては、施設の事前見学はもとより、登録情報などにも必ず目を通し、入居前の十分な調査と検討を行うことが大切です。
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