介護施設の感染症対策~高齢者と感染症。


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「病院の院内感染」「介護施設でノロウイルス発生」など、感染症にかかわる事故の報道は、残念ながら毎年必ず見かけるところです。

入居者の家族は、介護施設においてどのような感染症対策が取られているかが気になるところですね。


そもそも、「高齢者の発熱は、原因の90%以上が感染症」と言われるほどです。

しかも高齢者の場合、重症化してもさほど熱が出ない等、症状がはた目に漠然としている(元気がない・食欲がない・あまり動かなくなった)ことが特徴です。嘔吐や下痢等のわかりやすい症状も、いつもあるとは限りません。

とりわけ本人が認知症の場合、自分からSOSが出せないことも多いため、早期に発見するための「周囲の観察力」が大事です。

健康な成人にとって問題が無くても免疫力の衰えた人や高齢者にとって脅威となる、いわゆる「日和見(ひよりみ)感染」もあり得ます。

またひとつ間違えば、肺炎・気管支炎等の合併症につながる恐れもあります。高齢者の発熱は、たとえ微熱であっても医療的に要注意で経過観察が必要なことは、介護の常識として覚えておきましょう。


介護施設は、入居者にとっての「生活の場」です。感染への抵抗力が弱まっている高齢者が、多くの人が外から出入りする施設内で集団生活を続けること自体に、一定の感染症リスクがあることは認めざるを得ません。

万一の集団発生などに備えた感染症対策が、必須とされるゆえんです。


感染症といっても病原体ごとに様々ですが、通常は手や物に触れることによる「接触感染」、咳やくしゃみによる「飛沫感染」、食事等による「経口感染」を重視した対策がとられています。

一般的に「接触感染」がもっとも多いと言われますが、たとえば患者の体液や吐瀉物に触れた手を消毒しないまま触れた食品や衣類等を介して、「経口感染」することも珍しくありません。

ただし、手洗い・アルコール消毒を通じた「標準予防策」をきちんと行うことによって、感染症の発生をかなり減らせることが実証されています。

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病院や介護施設等では、主に「インフルエンザ」による呼吸器系の感染症、そして胃腸炎や食中毒の原因となる「ノロウイルス」が代表例でしょう。

「インフルエンザ」は11月~2月位まで、特に12~1月の冬季が流行のピークで要注意です。くしゃみによる飛沫感染では、インフルエンザウィルスが2mくらい先まで飛ぶ可能性もあるため、マスクの着用が求められるところです。

インフルエンザ以外では、冬場にかけて集団感染のリスクが高まりやすい「ノロウィルス」にも、注意が必要です。

インフルエンザと違ってワクチンがありませんが、嘔吐・下痢・腹痛等の発症を経たのち、安静にして体力回復に努めることにより数日程度で回復します。


施設ではまず、「外部から病原体ウィルスを持ち込ませない」ことが重要になります。

施設への出入り業者や入居者家族・見学者など、外部関係者との接触が多い職員の介助を通じた感染の事例等も、報告されるところです。

デイサービスやショートステイ利用時の人の出入りや、施設の行事への外部者の参加を通じて、ウィルスが持ち込まれる可能性が常にあるわけです。


家族が施設で感染後に自宅や職場で広めてしまうリスクもあるため、体調の不良や変調を感じている時期は、介護施設への面会往訪や入居見学等は避けましょう

入居者の家族としても、感染症対策の基本的知識は身につけておくべきですし、それが事故の予防感染拡大の防止にもつながります。


外部からの出入りが多い施設はどこであれ、感染症の発生リスクを根絶することは、一般に非常に難しいものです。

しかし前述のとおり、「感染経路」の特徴を押さえ、それにそった一定の対策を講じるだけでも、感染リスクを大きく減らすことができます


厚生労働省も、標準となる「高齢者介護施設における感染症対策マニュアル」を用意しています。

【PDF】高齢者介護施設における感染対策マニュアル(厚生労働省)


必要な手順をマニュアル化した感染症対策を実行しているか、またそれらがミーティング等を通じて管理者・全職員にきちんと共有されているか否かは、介護施設のスプリンクラー設置状況などと同じく、良い介護施設を見分けるためのポイントの一つになります。


介護施設側の具体的対策としては、「手洗い・うがいの履行」「作業時のアルコール手指消毒」「施設内の消毒」「廃棄物の管理」「事故発生時の緊急連絡体制」「施設職員の健康管理・研修の体制」「万一発症した場合における、職員の休業・就業制限」などがあります。


施設として日常的な感染症対策をどのように行っているかを、あらかじめ責任者に確認しておくと安心でしょう。


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