介護保険施設(2)〔介護老人保健施設〕。


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介護老人保健施設は「老健(ろうけん)」とも言われ、介護を必要とする高齢者の自立を助け、家庭で生活していけるように支援する施設です。

全国に4,096施設・定員数は約36万人(2014年)あり、現状はほとんどが医療法人の運営となっています。

要介護度1~5の認定を受けた65歳以上の高齢者で、病状がほぼ安定して入院治療の必要はないものの、リハビリテーションを必要とする人が入所できます。

これを逆からみると、リハビリテーションの対象外の人は入所できませんし、また現状のリハビリを継続できない場合には退所せざるを得ないということになります(ただし、入所契約の更新や再入所は可能です)。


本人の自宅復帰の目標に向かい、医師による医学的管理を基準にした看護・介護、リハビリテーション・栄養管理・食事・入浴等の日常サービスを併せて提供し、夜間でも安心できる施設となっています。

ただし、医師や看護師がいる施設なので医療面ではよいものの、施設に入所中は、原則として他の病院にかかることはできません(急病の場合は、連携する病院などで治療を受けることになります)。


病院での治療を終了後、多少の障害が残り、いきなり家に帰って生活するには、本人も家族も不安が残る場合があります。

そのような場合、一定期間を目安に(3~6ヶ月程度)介護老人保健施設(老健)に入所します。ここでは施設に常勤している理学療法士や作業療法士らによる自立機能向上を目的としたリハビリや、介護方法や介護用品の使い方の指導などが行われます。

一定期間(3ヶ月)ごとに在宅復帰が可能かどうかの入退所判定が行われ、可能なら帰宅ということになります。ちなみに介護老人保健施設(老健)の在所期間は、平均で1年弱程度です。

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介護老人保健施設は、このように病院から在宅へのかけ橋となるという意味で「中間施設」とも呼ばれ、介護保険三施設の中でも中間的な位置づけとなっています。


ところで、厚生労働省は、介護保険三施設のひとつである「介護療養型医療施設(介護療養病床)」において、医療や看護をほとんど必要としない入所者が約半数を占め、給付費の無駄が指摘されていること、医療保険が適用される「医療保険型療養病床(医療療養病床)」と機能が似ていることなどの理由により、これを2011年度末(2012年3月末)で廃止する方針を表明していました。

(介護療養型医療施設(介護療養病床)の詳細については、介護保険施設(3)〔介護療養型医療施設〕。をご参照ください。)


この決定当時、国は全国に12万床あった「介護療養型医療施設(介護療養病床)」を全廃し、あわせて「医療保険型療養病床(医療療養病床)」25万床の相当数を削減して、コストが比較的低い他の介護施設や自宅などに移行していくことを想定していました。

その後療養病床の廃止・転換はある程度は進んだものの、国の当初の想定どおりにはならず、2016年3月現在で「療養病床」はいまだ全国に約33.9万床も存在(介護療養型医療施設(介護療養病床)約5.9万床、医療保険型療養病床(医療療養病床)約28万床)しています。



【追記1(過去の施策)】
2011年度末(2012年3月末)を期限として予定されていた「介護療養病床の廃止」は、他施設への転換が時間的に間に合わないこともあり、廃止計画を2017年度末(2018年3月末)まで猶予することとなりました。

また2012年4月からは、「介護療養型医療施設(介護療養病床)」の新設は認められなくなりました

【追記2(過去の施策)】
2015年の介護報酬の改定を通じ、「医療ニーズの高い入所者」への対応を強化した「療養機能強化型」の介護療養型医療施設が、新たに設けられることになりました。

介護療養型医療施設(介護療養病床)の廃止を謳う一方、重度者に手厚い医療を施すため新タイプの介護療養型を設ける必要もあるとして、国はこれを矛盾しないと考えたようです。

【追記3(過去の施策)】
2016年1月、厚生労働省は有識者の検討会を通じ、医療療養病床・介護療養病床のうち約14万床を2017年度末(2018年3月末)までに廃止して、医療体制の整った「医療内包型」「医療外付型」の2種類の施設を新たに設置する旨の報告書をまとめました(詳細は介護保険施設(3)〔介護療養型医療施設〕。 【追記3】ご参照)。


厚生労働省は、医療・看護の体制を強化した施設と位置づける「転換老健」への移行を推進するという基本方針にもとづき、2008年5月に、患者の受け入れ先の中核的存在として想定する「介護療養型老人保健施設(新型老健)」の制度を、新たにスタートさせました(これと対比して、これまでの老人保健施設は、「従来型老健」と通称されています)。

「介護療養型老人保健施設(新型老健)」の詳細については、介護療養型老人保健施設(新型老健)。をご参照ください。

【追記4】
上記(追記3)の流れを受け、2017年5月に一括法として成立した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の中の「改正介護保険法」に基づき(医療法も同時改正)、「介護医療院」が誕生することとなりました。

「介護医療院」の基本的な性格は「要介護者の長期療養のための医療、および日常生活上の世話(介護)を一体的に提供する施設」となります。

現状から察する限り、「病院の中で、リハビリ等も行いながら日々の(要介護)生活を営める施設」のイメージです。


この「介護医療院」は、全国にいまだ数万床ある「介護療養病床」の主な転換先に位置づけられています。

介護医療院の利用要件や、施設基準等の詳細は、これから社会保障審議会・介護給付費分科会で議論される予定です。国がこれまで介護療養病床の転換先として進めてきた「新型老健」や既存の介護施設等とのすみ分けも、議論すべき課題となりそうです。

2018年3月末までの全廃予定で話が進められてきた「介護療養病床」ですが、今回の改正で(介護療養病床から介護医療院への)移行期間も考慮し、介護療養病床の廃止・転換期限を、2018年3月末からさらに「6年間延長」することになりました。

介護医療院については、介護保険施設(3)〔介護療養型医療施設〕。 もあわせてご参照ください。)



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