介護保険三施設、懸念されている問題点。
これまでご紹介してきた、全国の介護施設数のおよそ4割を占める「介護保険三施設」ですが、
それぞれ現状において、深刻な問題を抱えています。
まず、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)」については、全国で施設数としては最多
であるものの、需要に供給がまったく追いついていません。
現在、新しい入居者については、常時介護が必要な寝たきり・認知症などの要介護4-5の高齢者の
入所が優先されていますが、どの市町村でも待機者が増える一方…というのが、実情です。
要介護4-5の重度であったとしても、1、2年待って入居できればまだよい、という状況の施設も、
決して珍しくはありません。
施設の増加をはかろうにも、建設費用の四分の三をまかなっていた国の補助金が2005年に廃止
されたことから、今後は地方自治体の負担も重くなるためそうそう新設を期待できないのが現状です。
さらに特養において現在主流の「4人相部屋」のスタイルでは、個々の入居者のプライバシーや生活の質を維持することが難しいのは明らかであり、「2014年度までに全体の7割をユニット型にする」という目標を掲げる厚生労働省と現実のギャップは、大きくなる一方です。
国の建設補助金の廃止によって特養の新設そのものにブレーキがかかっていると同時に、今後のユニット型への移行や個室部屋の増加も期待薄となっているわけです。
また、特に地方における特養では、地元の名士や資産家などが社会福祉法人を設立し、その経営主体となっているところも多くあります。
中には介護への関心や意識がそれほど高くない経営者もいるため、施設の維持運営やサービス水準が低いままとなっている特養の数も少なくないようです。
2011年度末(2012年3月末)までに「介護療養型医療施設(介護療養病床)」が廃止されることが決まっていることから、その影響により、今後は介護老人福祉施設(特養)への入所希望者がさらに増加するだろう、とも言われています。
需要がさらに増える中、今後の入居を希望する待機者の激増に、「特養」はどれほどの供給増をもって
応えられるかが不安視されています。
「介護老人保険施設(老健)」においては、原則として入所期間が3ヶ月から長くて半年程度と限られて
いますが、リハビリが成功し健康を取り戻して自宅へ帰れるケースは、どちらかといえば少数派のようです。
実態としては、「介護老人福祉施設(特養)」へ入所するまでの「つなぎ」としての位置づけとなっており、「老健」を別名「第二特養」などと呼んでいる人もいるくらいです。
そのため、「特養」への入所を待ちながら一定期間ごとに複数の「老健」を転々とする、というケースも、現実に珍しくないようです。
また、介護保険施設(2)〔介護老人保健施設(老健)〕。でご説明したとおり、厚生労働省は現在の
「老健」について、医療・看護の体制を強化した「転換老健」とすることによって、将来の「介護療養型
医療施設(介護療養病床)12万床全廃、8万床の医療保険型療養病床(医療療養病床)の削減」によって生じる退所者の、「受け皿」にしていく方針を示しています。
【追記】
なお、2008年7月26日の報道によると、厚生労働省は2006年度に立てたこの削減目標を緩和し、2012年度末(2013年3月末)までの療養病床の目標数を、従来目標より4万床多い「22万床」とする方針を決定しました。
「医療・介護難民」が増加する」との社会的批判の高まりを受け、方針転換したとのことです。
しかし、「転換老健」に移行するといっても、現在の「老健」の機能は「リハビリによる在宅復帰支援」が中心ですので、症状が安定しているにせよ、医療関係者にしかできない行為が必要なケースが多い
療養病床の患者が大量に移ってきた場合には、その受け入れが難しいだろうと懸念されています。
他の医療機関の医師が夜間に往診するなどの対症療法で、どこまでカバーできるか、を心配する声も
あがっています。
加えて療養病床を併設している病院は、老健などへの転換費用も必要になってくることから、今後の
財政的負担に耐えられるか、転換後の経営が成り立つかどうかを、不安視する声も各地からあがって
います。
厚生労働省が2008年5月に転換後の患者の受け皿として新たにスタートさせた「介護療養型老人保健施設(新型老健)」については、早くも医療関係者からは「介護報酬の水準が低すぎる」との声があがっており、療養病床をどうするかについて迷っている病院経営者が、厚生労働省のもくろみどおりに新型老健へと転換するかを危ぶむ声もでてきています。
「介護療養型医療施設(介護療養病床)」については、まず2011年度末(2012年3月末)で全廃されることについての社会的認知が、そもそも進んでいません。
この「介護療養型医療施設(介護療養病床)の廃止・医療保険型療養病床(医療療養病床)の削減」について、まだ知らない患者の家族が全体の5割近くに達している、というアンケート結果すらあるようです。
12万床が全廃される予定の「介護療養型医療施設(介護療養病床)」から退去を迫られた高齢者は、自宅に戻り訪問介護などを受けるケースが基本的に想定されていますが、長期間にわたって療養してきたために体が弱っていることもあり、自宅に戻れないケースが相当数でてくる事態などは、当然起こりうることです。
大幅な削減を予定する「医療保険型療養病床(医療療養病床)」についても、現在は医師や看護師が常駐していることから、いざという時の対応もまだ比較的すみやかに行えるものの、高齢者が他の介護施設に移ったり自宅に戻ったりした場合にはその対応が遅れるのではないか、という懸念が示されています。
「介護療養型医療施設」の場合と同様、「医療保険型療養病床(医療療養病床)」についても、退院を余儀なくされた後に行き場を失う高齢者(医療・介護難民)が相当数に上るだろう、といわれています。
たとえば、現在の医療保険型療養病床(医療療養病床)においては、高齢者の認知症や慢性疾患などは最も軽い症状として区分されているため、医療の必要性が低いという扱いを受け、診療報酬も低く抑えられています。
しかしながら、認知症の患者へのケアは現実問題として時間がかかるため、病院側としては採算性が
とれないままに長時間の対応を要する認知症の患者を多く受け入れることが、今ですらままならない
状況になっています。
すでに、「医療保険型療養病床(医療療養病床)」も計画に沿って、各地で施設数の減少が進んでいることから、とりわけこれらの認知症患者を含めた「診療報酬の計算上、軽度に区分されている患者」の受け入れ先を今後どの程度用意できるのかが、深刻な問題になるだろうと懸念されています。
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